星が瞬く。




凜々の明星が、強い光で存在を確かにしている。






細い三日月が、そこだけを切り取ったかのようにして、在る。


は静かにその光たちを見つめていた。










銀の月 −微熱













空を塗りつぶした暗闇に、点々と光を放つ星々。

細い存在を示す月。

空にあるのはそれだけ。そして世界は、闇の中だ。

はふらふらと歩いていた。


今日は野宿で、みんなそれぞれ毛布にくるまって木にもたれかかっていたり、地面に寝転んでいたりする。

星たちを見上げながらは歩を進めた。ぼんやりと、ただ空だけを見上げて。

ふと、踏み出した右足が空を蹴った。



ずっ……




地を滑る音。

落下感。

急に残像のようになる視界。

そして、声。

「−−−−−−−−あっぶ、なぁ…。」

「あれ…」

いきなりやってきた浮遊感は、すぐになくなった。何かが自分の体を支えているのを理解する。

不安定に揺れる足元を見ると、はるか遠くに、地面があった。

「何してんのよジャックちゃん!あぶないでしょ?」

「レイヴン…?」

頭上から怒声が聞こえ、はぼんやりと顔を上げた。

その動作の間に、レイヴンはの体を引き上げる。

意外に力強い。腰を抱えて後ろから引き上げてくれたものだから、そのままレイヴンが地面に倒れこむとも一緒に倒れた。

レイヴンに抱きとめられる形になる。

はまだぼんやりと、見上げなくても目の前に広がる星々を見つめた。

「ちょっとジャックちゃん。聞いてんの?おっさんすっごいひやひやしたんだからね」

「…レイヴンって」

「ん?」

倒れこんだままの腰を抱きしめていたレイヴンの腕に、の掌が触れた。

「体温低い?」

「………………………………ええと、どしたの一体?いつものジャックちゃんじゃなくない?」

まるで覇気のない彼女の声音に、ただならぬものを感じて、レイヴンは体を起こした。

の視界がまた変わる。今度は、見上げなければ空は見えない。

ぼんやりと、はレイヴンを振り返った。

胡坐をかいて座っているレイヴンの膝に、ちょこんとは乗っている形になる。

たれ目がちの深い藍色の瞳が、ゆるく細まる。

「こうしてればあったかい?」

「………………………………………」

は、そのままレイヴンに抱きついた。ぎゅう、と背中に腕を回してきつく抱きしめてくる。

今度はレイヴンがぼうっとして、しばらくの後頭部を見つめて、所在無げに両腕を膝に投げ出していた。

あったかいと言えば、確かにあったかい。

(…体温高いのね…この子…)

まるで熱の塊のようだ。普段の底抜けの明るさを見れば、体温が高いのも何となく納得ができた。

けれど、今の彼女は――――…



はた、とレイヴンは何かに行き当たった。

手持無沙汰だった腕を動かし、の肩を掴むと自分の体が引っぺがす。はゆらり、揺れるがされるがままだ。

片腕での肩を抱き支えると、額に掌を当てた。

熱い。

「…まさかジャックちゃん…」

は半分伏せた瞳で、虚ろなまなざしを地面に投げていた。

こちらを見ようともしない。よくよく見れば、顔も赤い気がする。

まさかも何も、

「ジャックちゃん、熱あるんじゃないの?」

「ん〜…、大丈夫…。一晩寝れば、治る治る…」

「大丈夫って…そんな掠れた声で何言ってんの。

 大体何で熱あんのにふらふら歩いてんのよ危ないでしょ?

 嬢ちゃん起こして診てもらう?」

「んーん…。いい…」

「いや、いいって。そんなこと言ってる場合じゃないでしょ?」

「だめ…なの…エステルの力は…」

はふらふらとしながらも、レイヴンの腕から逃れようとするが―――ままならない。

力なく体が揺れて、ぽす、とレイヴンの胸にもたれかかった。

「だめって…。じゃあどうすんのよ。ここから街は遠いし他に―――」

みんなを起こさないと、と言おうとしてレイヴンは、押し黙った。

熱でうるんだの瞳が、まっすぐにこちらを見ていた。

吐息が荒く、頬も赤く染まっている。自分の胸にもたれたまま、指先を唇に当ててきた。

「黙ってて…。このまま…」

唇に触れた指先すら、熱かった。

そのまま全身の力が抜けて、は完全にレイヴンに全てを預けた。

汗ばんだ寝顔がやけに艶っぽい。


いや。


いやいやいやいやいや、待て。

(何この子の殺人的な色気は!?)

齢16の娘だ。自分より一回り以上違う。自分から見れば子供のようなものだ。そう、あの天才魔導少女の一つ上なだけ。

いやいやいや待て。問題はそこじゃない。

無駄に鼓動が早くなっている自分を抑えるように、必死に思考を切り替える。そうだ、さっき、彼女は何か気になることを。

「嬢ちゃんの力が…だめ?」

どういう意味だ…?



「なぁーにやってんだ?おっさん」

「!!!!!」

せっかく思考を変えたというのに、それもすべて霧散した。

レイヴンの後ろに、凶悪に笑って刀に手をかけているユーリが立っていた。

「…ユ、ユーリくん…」

ユーリははた、とを見下ろして理解したらしい。刀を収めた。

「成程…。悪いな、こいつ調子悪かったんだろ。」

「ほえ?」

「…すっとぼけた返事すんなよオッサン。こいつ、いっつもこうなんだ。

 たまーに熱出してふらふら外出て。危なっかしいったらねぇ。」

レイヴンに抱きかかえられたままのの寝顔を覗き込んで、ユーリは額の汗を拭いてやった。

「わかってるなら事前に言ってよ…。オッサン無駄に疲れちゃったわ…」

「はっはっは。まーオッサンが変な気起こしたらたたっ斬ろうと思ったんだが…」

「傍観って一番たちが悪いわよ!?」

「悪い悪い。まぁ頼むわ。こいつ一人で寝かすとまた勝手に動き出すから、誰かが捕まえてねぇとだめなんだ。

 オッサン、しっかり捕まえてろよ。くれぐれも変な気起こすんじゃねぇぞ。」

「…まさかこのまま朝までってわけじゃないでしょうね…?」

「ピンポン。ご名答。まかしたぜーオッサン。くれぐれも」

「そんな何回も言わなくたってわかってるわよ!」

「じゃーいいんだ。頼むなー」

そういうと、あっさりとユーリは自分の寝床に戻っていく。

レイヴンは恨めしい視線をしばらくユーリに送ってみたが、無駄だと理解して、やめた。




「レイヴン…」

「…あ、ごめん起しちゃった?」

名前を呼ばれたので、起きてしまったのかと思っていたが―――違うようだ。は目を伏せたまま寝息を立てている。

「寝言…か」

レイヴンはどこかほっとしたように息をついて、を抱えなおす。

「…寝言?」

どうして寝言で自分の名前を呼ばれるのだろうか。

ふと、そんな疑問が浮かんでしまった。

「……………………………………………………」


嗚呼もう。

がっくりと肩を落として、深く深く息をつくと覚悟を決めた。

の体が冷えないように抱きかかえる。

こういう時に限って、女の子の体の柔らかさを感じる。の髪からほのかにいい匂いがした。

(……………………………さすがのオッサンも、理性の限界ってもんがあんのよ…?)

揺らぎそうになった思考を払いのけて、レイヴンは何度も頭を振った。



レイヴンはとりあえず心を無にすることだけを考えて、朝を待った。

ひたすらに待った。

ここまで自分が律儀な性格であることに改めて気づかされた。いらない気付きだ。





朝は、まだまだやってはこない。






途方に暮れて見上げた星空に、とりあえず願掛けをした。

流れ星など流れてもいないが、とりあえず、祈らずにはいられない。











長い、夜になりそうだった。












































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70様から、70様のサイトの19万打フリリクで頂いちゃいました(*ノノ)
リクエストはおっさんと連載ヒロインがじゃれる夢〜ってことで・・・。
70様のサイトのTOV夢ヒロインちゃんかわいいんですよ〜〜!!
読んでわかるとおり!!
そりゃじゃれさせるしかないでしょ!!><ってことでリクエストさせていただいたんです(笑
んで、頂いたのは予想以上の!!!かわいすぎるでしょヒロインちゃん!!
まぁ、おっさんはご愁傷様というかなんと言うか。
いやでも役得?
ユーリの保護者っぷりもまた良い(*ノノ)
おっさんはもっと振り回されるといいよ!!
あ、ちなみに一部ヒロインの名前変換されてませんが、あだ名?みたいな扱いなので変換できません!!
70様ー!素敵な夢をありがとうございました!感謝感激です。