「おばさん!フレンきてる?」


下町の一角。
お昼時なのもあってか、そこそこ繁盛している店内には駆け込んだ。
そして中をぐるりと見回す。

がやがやとした喧騒も、そこかしこのテーブルから漂ってくる良い匂いも、
毎日見慣れた光景である。

しかし今日は別であった。
今日はフレンがお休みの日。

騎士団所属、フレン小隊長。
下町のヒーロー的な存在の彼はの幼馴染であり、と相思相愛の仲でもある。

騎士団に入りたての頃はフレンも頻繁にに会いに来てくれていたのだが、 
最近は忙しいのか、めったに下町へこなくなってしまった。
その彼が久々にお休みを取ってに会いに来てくれると言ったのだ。

気合を入れてめかしこんでいたら、待ち合わせ時間を少々オーバーしてしまった。
急いで待ち合わせ場所である店に行ってみれば、いるはずの待ち人はまだ来ていないようであった。


「いいや、まだみたいよ」
「なーんだ。まだなのか」


店の奥にいた女将さんが、の声を聞きつけて、ひょっこりと顔を出した。
厨房によっぽど熱気が篭っているのか、吹き出た汗を手ぬぐいで拭いつつだ。


、どこいくんだい!」


がっくりと肩を落とした後、くるりと向きを変えたに女将さんの声が掛かった。
の行動を予想していなかったのか、若干の焦りが感じられる声だ。


「ちょっとフレンを探しに」
「探しにじゃないよ!
 あんたバイトはどうするんだい。
 今日は忙しいんだからとっとと手伝っておくれよ」


キョトンとが振り返り、何の気もなしに言付けると、
今度こそ女将さんは焦った声をあげた。
その彼女が示す先はごった返す店内と、いつの間に取り出したのか、
がいつも着用しているエプロンであった。


「へ?今日は夜からのはずじゃ・・・・・・」


確かにはこの店で働いていて、いつもはお客相手に料理を運んでいる時間である。
けれど今日は夜からのはずで。
そう女将さんに告げてはみるが、彼女は聞く耳持たずであった。
問答無用でエプロンを渡した後、
女将さんは出来たばかりの料理が乗ったお盆をに指し示した。


「いいから、ほら早く!!
 これ、あっちの客にお願いね」
「もう、しょうがないなぁ・・・・・・」


女将さんには世話になっている手前、強くは言えず、
は溜息を漏らしながらも、エプロンのリボンを結んだ。
袖を腕まくりしてお盆を二つ手に持つ。
ずしりとした重さが腕に掛かるが、
は笑顔を浮かべながら女将さんが示した先のテーブルへと向かっていった。










「お客さん?うちで騒ぐのはやめてくれません?」
「なんでぇ、姉ちゃん。俺らにいちゃもんつける気か?」
「いえ、そうではなくてですね・・・・・・」


昼間から飲んでいるのか、大声で騒ぎ出した客を注意した矢先であった。

気分良く飲んでいたのであろう、が声をかけると、
彼らは気分を害したというかのように柄の悪い目つきをに送った。

そのうちの一人が、がたりと椅子から立ち上がる。
彼らの中で一番赤くできあがった顔をした男である。


「ちょ、顔、近い近い・・・・・・」


は彼ににじり寄られていた。
「あぁん?」といかにもな言葉を吐きながら間近まで迫った男の息は酒臭く、
酒の匂いになれたとはいえ、気分の良いものではない。
ましてや好きでもない男に迫られる趣味もないわけで。

じりじりと後退していくの体はいまや店の入り口の扉まで到達しつつあった。


「この店の看板娘に手ぇつけようとはいい度胸だな」
「フレン!?」


万事休すかと思い目を瞑った瞬間、トンとの背中が何かにあたった。
いつのまにかに店の入り口に誰かが立っていたらしい。
その"誰か"は男に向かって声を投げると、ぐいとの体を引っ張った。
は"誰か"の後ろにかばわれる形となる。


「なんだ、ユーリ兄か」


お姫様のピンチを騎士が助けに来た。
そんなシチュエーションを頭に思い浮かべながら目を開ければ、
あるのは見慣れた黒い背中。
の兄であるユーリがそこにはいた。


「フレンじゃなくて悪かったな」


期待したものとは違う展開に、があからさまに肩を落とすと、
ユーリが憮然とした視線をよこした。
せっかく助けに来てやったのにその言い草はなんだといった態度である。
しかしそんなことを気にする妹ではなかった。


「ユーリ兄、この店の用心棒でしょ?
 さっさとこいつら追っ払ってよ」


この兄にして、妹あり。
非難がましい視線をさらっと受け流したはユーリの後ろから男達を指差した。
ユーリの登場をうけて男の仲間である者たちまでもが攻めかけてきていたのだ。


「この店の専属になった覚えはないが・・・・・・。
 かわいいオレの妹に手を出したのが運の尽きって、な!」


猛然と迫り来る男達の足元を、鞘に入ったままのユーリの剣がすくった。
くるりと一回転した剣はふわりと男達を舞い上げると、ストンとユーリの肩の上に収まった。
直後、ドサッドサッと重い音と共に舞う土埃。


「おお、瞬殺」


店の外で男達は折り重なるように伸びていた。
放っておけば後は勝手に逃げていくだろう。

半ば棒読み的に賞賛の拍手をユーリに送ると、は彼らの存在をシャットアウトした。


「ところで、ユーリ兄。フレン見なかった?」
「フレンならそこの噴水のとこで見かけたぞ」
「もう、どうしてつれてこなかったの!!」


フレンと約束があることはユーリも知っているはず。
ぷくーっと頬を膨らませてむくれるに、ユーリが小さく肩を竦めて返した。


「なんか取り込み中ぽかったんでな。
 オレにはこっちの騒ぎの方が重要だったし」


そのまま放置してきた、とのユーリ談。

確かに来てくれたのは助かったが、フレンのことを聞いた今では話が別であった。
約束があるにも関わらずがお店の手伝いをするのを承諾したのは、
待ち合わせ場所がここであることに他ならない。
働きながらもフレンを待つことが出来ると踏んだからである。


「ユーリ兄、後は任せた」


フレンは約束を違える男ではなかった。
時間になっても来ないということはそうなるに足る理由があるということだ。

エプロンのリボンを解き、それをユーリに向かって放り投げると、
は噴水のある広場に向かって駆け出した。


「任せたって・・・・・・これでオレに何をしろと」


後にはフリフリのピンクのエプロンを手に持った、呆けた顔のユーリだけが残されていた。

















ユーリの言った通り、噴水広場にフレンはいた。


「フレン!!どうしたの??」


駆け寄りながらが声をかけてもフレンは気付かなかった。
噴水の縁の付近でうろうろとするばかりである。


「フレンってば!!」
「え?あ、ああ、。君か」


再度、近くに寄って声をかければ、やっとフレンはこちらに気付き顔をあげた。


「どうしたの?こんなところでうろうろして」
「それが・・・・・・、いや、なんでもない」


言いかけて、フレンは首を振った。
しかし、首を振る間際、彼が水の中をちらりと窺ったのを、は見逃さなかった。


「噴水に何か落としでもしたの?
 私も探してあげる!!」
「え!?あ、ちょっと待った、、そこは段差が!!」
「―――ふぇ?」


裾を巻くってばしゃんと噴水に飛び込んだが足を一歩踏み出そうとすると、
一瞬後れて慌てたフレンの声が追いすがった。

しかし、遅かった。
驚いて振り返ったの足ががくんと落ちる。


「きゃっ!!」


支えを失った体は前のめりに傾いでいく。
倒れると思った瞬間、腕をとられる感覚。
そしてばしゃんと水飛沫があがった。


「あ〜あ。びしょびしょだね」
「びしょびしょだね、じゃないよ。全く君は・・・・・・」


助けようと腕をとってくれたのはフレンであり、
水の中に倒れこんだのはとフレン両者であった。
いつものフレンならそんなミスはしないのだが、
驚いたがフレンの手を引っ張ってしまったせいだ。


「いいじゃない。今日は天気もいいし。
 水浴びみたいで気持ちいい〜」


今日はぽかぽかと陽気もよく、ひんやりとした水が素肌に気持ちよかった。
この気温であったら服もすぐ乾くであろうし、はあっけらかんとしたものだった。


「何これ?」
「そ、それは・・・・・・!」


ふと視線を水の底へやるとは底に日の光を受けてきらりと輝くものを見つけた。
それをつまんで目の前にかざしてみる。
丁度段差の陰に隠れていて上から見ただけじゃ分からなかったものだ。


「なんか見たことあるような・・・・・・」


日の光に照らされたそれは銀の指輪であり、には見覚えのあるものであった。
しかしどこで見たのか、思い出せずにいると、指輪の内側に何か文字のようなものが彫ってあるのに気付く。


「ん・・・・・・?」


しげしげとそれをみつめれば、そこにはとフレンの互いのイニシャルが。


「フレン、これって・・・・・・」


見覚えがあると思った指輪は、以前が欲しがったものであった。
今見たものが真であるのかどうか、半ば信じられずがフレンをちらりと窺うと、
ばつが悪そうな顔をして、フレンは頬を掻いた。


「今日は君の誕生日だろ?
 だからそれをプレゼントにって思って・・・・・・」
「嬉しい!!」


ばしゃりと水音が大きく響く。
フレンの言葉を最後まで待たず、思い余ってはフレンに抱きついていた。
抱きつかれたフレンの顔がみるみるうちに赤くなっていく。


「えへへ、ありがと、フレン。
 ―――似合う?」
「・・・・・・ああ。誕生日おめでとう、


指輪をはめてくれた優しい手も、耳まで照れた赤い顔も、彼の全てが好きだった。
再びフレンに抱きつくと、は彼の胸に頬を摺り寄せた。


「フレン、だいだいだーい好きだよ」
「・・・・・・僕もだよ」


二人を祝福するかのように、水面がきらきらと輝き、噴水がザァーっと水を巻き上げる。
重なり合った影は一度離れたあと、また再び重なり合った。




















「おまえら、水の中で何してんだ一体・・・・・・」


噴水の水が引き上げると、心底呆れたような声と共に、水面に黒い姿が映し出される。
それは店で別れたはずのユーリであった。


「今愛を確かめ合ってるところなんだから。
 邪魔しないでよ、ユーリ兄」


ちらりとユーリに視線をよこしたは半眼でぷいと顔をそらした。
もちろん冗談交じりにである。


「ほー。ま、オレは別にいいんだけどな。
 怒られるのはおまえだし」
「え?」


キョトンとは目を瞬く。
怒られる?誰が誰に?
意味が分からなかった。


「突然抜けられて女将さんカンカンだぜ」
「!!」


ばしゃりと水が盛大な音を立てて周囲にはねた。
の手のひらが水面を打った為だ。


「ちょ、おまえ、濡れるだろ!?」
「フレン、また後でねー!!」


寸でのところで避けたユーリが非難の声をあげたが、
の姿はすでに道の向こう側にあった。


「なあ、ホントにあんな奴でいいのか?フレン」
「・・・・・・」


はねっかえりな妹に対する、心底呆れたような、兄、ユーリの問い。
その問いに対する返事は・・・・・・無言であった。






(後は任せたって言ったのに、ユーリ兄の馬鹿!!) (おまえ、オレにあんなフリフリのエプロンして給仕しろと?)
(それが似合うから困るんだよね、ユーリは・・・)

対無敵のMy girl



















































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フレン夢です!!
誰がなんと言おうとフレン夢です!!
例えユーリの方が出張っていてもふれn(以下略
伊瀬さまのサイト1万HIT記念&お誕生日祝いに書かせてもらいました!
フレン甘希望・・・なはずだったのにこの展開。
うん、すいません。私にはこれが限界みたいです(滝汗
ヒロイン設定は伊瀬さん宅のヒロイン設定を真似させていただいちゃいました><
ユーリが兄、フレンが幼馴染って素敵過ぎじゃないですかー!
はねっかえりは兄に似たって事で。
伊瀬さま1万HIT&お誕生日おめでとうございます!!
こんな夢でよろしかったらもらってやってください!!