「誕生日ぱーてぃ?それってなぁに?」
はキョトンと目を瞬き首を傾げる。
それは心底何も知らないといった無邪気な表情で、
思わず額に手を当てて、横目でリタはを見やった。
「・・・・・・ちょっと、あんたまさか誕生日も知らないってことはないわよね?」
「知らないけど・・・・・・何か特別な意味でもあるの??」
「誕生日とは、人がこの世に生をうけた日のことで、誕生日パーティはそれを皆で祝うものなんです」
「―――それで、今日がユーリの誕生日、なの?」
「はい」
リタの言葉に再び首を傾げたに、エステルのフォローの説明が入る。
それを一句一句聞き逃さないかのように、じっと聞いていたが、
真剣な目でエステルを見つめた。そしてそれに頷き返すエステル。
今日はユーリの誕生日で--本人はいたって普段どおりであったが、
それを知っていた仲間達は、ユーリの誕生日を祝おうと、パーティの計画を打ち立てたのだ。
しかし、エステルがそれを提案した時のの反応は、冒頭の台詞の通りである。
「誕生日を知らないって・・・・・・。ちゃんいったいどんな生活送ってきたの!?」
「あれ、皆には言ってなかったっけ?
私ユーリ達と会うまでずっと孤児院にいたの。
生まれてすぐに、親に捨てられたらしいわ」
思わず声を裏返し、レイヴンが問えば、さらりと言葉を返す。
その内容は全くさらりとしたものではなかったが、の表情はしれっとしたものである。
「そっか、それで・・・・・・」
「・・・・・・ごめんね、ちゃん、おっさんちょっと無神経だったわね」
カロルが小さく俯き、レイヴンが謝罪の言葉を述べると、は首を横に振る。
「ううん、いいの。
孤児院生活は・・・・・・確かにあまりいいものとはいえなかったけど、
そのお陰で皆に会えたんだから、私は幸せだよ」
孤児院から逃げて、迷い込んだ森で、ユーリに出会った。
ユーリとエステルと旅をして、皆と出会えた。
一度も外の世界に出た事がないにとって、初めて見る世界は、
全てが新鮮で、綺麗で、あたたかくて、
旅は決して楽なものではなかったが、それ以上のものを、は得ることが出来た。
それを皆に伝えると、エステルが少し瞳を潤ませて、そっとの手を取る。
「・・・・・・」
それににこりと笑って返し、は仲間達の顔を見た。
「それで、パーティって具体的には何するの?
私は何をすればいい??」
「そうね・・・・・・は・・・・・・」
続くジュディスの言葉、それをは真剣な目で聞いていた。
「ユーリ!!」
本日の野営の為に、周囲の警戒をしに行っていた(それはパーティの準備を内緒で行う為の仲間達の画策であったが)
ユーリとラピードが帰ってくる。
それを遠目からでも発見したは、すぐにユーリに駆け寄った。
「ん?なんだか、どうした?」
「ユーリ、ちょっとしゃがんで?」
ぱたぱたと音を立てて走ってきたに、ユーリは小さく首を傾げた。
目の前で急停車したの頬は心なしか赤く上気していて、何かあったのか?とユーリは尋ねる。
すると、ユーリに向かってちょいちょいと、手のひらを上下させる仕草をする。
「何をいきなり・・・・・・」
「いいから!!」
「わかったよ。・・・・・・こうか?」
その要求の意味が分からず、戸惑えば、いつになく強気なの声が掛かった。
仕方なくの前で少し屈めば、ふわりと甘い香りがユーリを包み込む。
「なっ、!?」
ユーリは正にの胸にぎゅっと抱きしめられている状態で、
驚いて声を失うユーリにはにこりと笑い、ぽんぽんとユーリの頭を優しく撫でた。
「あのね、私、ユーリが貰って嬉しいものを頑張って考えてみたの。
でもぜんぜん思いつかなくって、
そしたらジュディスに、あなたが貰って嬉しいものにあてはめてみたら?って言われて。
・・・・・・そしたら真っ先にこれが浮かんだの」
「ちょっと待て、言ってる意味が全く分からないんだが・・・・・・」
混乱する頭をとりあえず整理しようと、ユーリはの言葉を大人しく聞いてはいたが、
自身纏め切れていないのか、それは要領を得るものではなく、
ユーリは小さく溜息をつく。
「今日はユーリの誕生日なんでしょう?
エステルが誕生日は人が生まれてきた日だって言ってたの。
ということは誕生日がなければユーリは生まれてこなかったんでしょう?
だから、私、いてもたってもいられなくて・・・・・・」
「ともかく、落ち着け。
この状況もそんなに嫌ではないんだが・・・・・・。
どうしてそれがこうなるんだ?」
精一杯、ユーリに言いたいことをは伝えようとしているのだろうが、
それだけに、更にその内容は支離滅裂なものとなる。
そもそも、生まれた日が誕生日な訳で、
誕生日が無ければ生まれてこなかったなどは決してないのである。
そして未だユーリの頭はの胸に抱きしめられたままであって、
少々体勢がきつくなり始めたユーリがそれを指摘すると、ごめんと慌ててがその体を離す。
しかし、その顔は未だ興奮冷めやらぬ表情をしていて、
ユーリが「ほれ、深呼吸」と言うと、は小さく頷き、すーはーと一息ついた。
「ユーリがね、この世に生まれてきてくれてありがとうって伝えたかったの。
ユーリがいなかったら、私は今、生きてなかったかもしれない。
あなたがこの世に存在してくれたおかげで、一緒にいてくれたおかげで、
私がどれほどの幸せを感じ、楽しく嬉しい時間が過ごせたかを。
だから、だからね、ユーリ、私の感謝をあなたに伝えたかったの」
その後たどたどしくも自分の想いを、ユーリに伝える。
がいた孤児院は、あまり環境がいいものとは言えず、
年中子供たちが空腹に喘いでいた。
先の戦争で親を亡くした子供の数は少なくなく、
また、の様に子供を育てられるほど金銭に恵まれていない親が増加する一方で、
世話をするものの手が及ばないほどであったから、仕方がないとも言えるのだが、
そんな環境が嫌で、嫌で、堪らなくなったは思わず孤児院を抜け出した。
そうして迷い込んだ先は魔物の巣食う深い森であった。
当然、丸腰の彼女に何ができるわけでもなく、
怯え立ちすくむの目の前に現われたのは、この、今目の前で優しく微笑むユーリであった。
「それで、私がしてもらって嬉しかったことを考えたらこれだったの。
ユーリの、私の頭をポンポンって撫でてくれるその手が、
優しくて、温かくて、私はいつも幸せになれるんだ。
だから・・・・・・」
感謝してもしきれない、なによりも今、自分がどんなに幸せなのか、
その想いを伝えたくて、は必死で言葉を続けた。
ユーリは小さく眼を閉じた後、深く息を漏らす。
「そっか・・・・・・ありがとな、。
嬉しいよ」
「ホント!?」
閉じた眼を開き、をじっと見つめ優しく微笑めば、
は嬉しそうにぱぁっと顔を輝かせた。
「ああ」
再び頬を上気させ、上目遣いで纏わりつく、その様はさながらご主人様に懐く小さな子犬のようで、
それがとても可愛くて、に頷き返しながら、ユーリはその体を抱きしめようとした。
「あー!!!!」
しかし、突然叫び、身を反転させたによって、ユーリのその手は見事に空振りに終わる。
「皆が向こうで待ってるんだった!!
ユーリ、行こう?」
「・・・・・・」
「ユーリ?」
が指差した先を見やれば、逸らされる5つの視線があって、
どうやら一部始終をバッチリ見られていたらしい。
罰が悪げにユーリが額を押さえ俯くと、不思議そうにが顔を覗きこんでくる。
「・・・・・・いや、今行く」
「うん!」
小さく溜息をつき、頷けば、心底嬉しそうなの声が返ってきた。
野営地に戻れば、おいしそうな料理の数々と、にやにやとした笑みが出迎える。
その笑みの出処はもはや言うまでもないだろう。
そちらは絶対見まいとユーリがに顔を向けると、
綺麗に飾られたケーキの皿を手に持ったが嬉しそうに近寄ってくる。
「誕生日おめでとう!!ユーリ!!」
「あんがとさん」
「ユーリ、このケーキ、私が作ったの。食べてみて?」
「・・・・・・が・・・・・・?」
差し出されたケーキを凝視し、そのままちらりと横目でを見る。
すると、不満そうに腰に手を当てる。
「なぁに、その半信半疑な目。
そりゃちょっと、や、かなり・・・・・・
・・・・・・ほとんどはジュディスが作ったんだけど私も手伝ったもん!!」
「やっぱりな・・・・・・」
今までの旅の中で、それは見事な料理の腕前を披露したに(それはもちろん悪い意味の方である)
こんなケーキが作れるはずがない。
は必死に言い訳をしているが、やはりこれはジュディスが作ったものらしい。
それを見通していたユーリが小さく溜息をつくと、
がぷくーっと頬を大きく膨らませる。
「もう!今に見てなさいよ!
いつかユーリをぎゃふんといわせてやるんだから!」
「ぎゃふんておまえ・・・・・・」
「何よ」
「いや、なんでもない・・・・・・。
楽しみにしてるぜ」
誰から教わったかなんて見当はすぐつくが、死語を言うに、
ユーリは一瞬呆れた声を漏らしたが、すぐに首を振り、ぽんぽんとの頭を撫で、笑みを返す。
「うん!私頑張る!」
すると、が嬉しそうに頷き、ユーリに抱きついた。
ぶんぶんと、尻尾があれば振り回していそうな表情で、
それでユーリをいっぱい、いっぱい幸せな気分にしてあげるんだ、とは続ける。
「・・・・・・」
「どうしたの?ユーリ」
の言葉に小さく俯いたユーリの前に、がしゃがみ込む。
「、ちょっとこっち来い」
「え、でも皆は?」
「いいから」
訝しげに首を傾げるを尻目に、ユーリはその手を掴み、奥へと彼女を引っ張っていった。
「、さっきお前、オレと一緒にいられて幸せだっていったよな?」
今度こそ仲間達の目の届かない所までを引っ張ってくると、ユーリは話を切り出した。
射抜かれるんじゃないかとが思うほど、その目は真剣で、
「うん、言ったけど・・・・・・」
それにが小さく頷き返すと、ユーリはそっとを抱きしめた。
「ユーリ?」
「オレも、お前と一緒にいられるだけで幸せなんだよ。
これまで、生きてきてよかったって思ってるんだぜ」
目を瞬き上を見上げてくるに、ユーリは囁くように言葉をかける。
それは嘘偽りのないユーリの想いで、
彼女を抱きしめた腕に力を込めると、ふわりと再び甘い香りがユーリの鼻腔をくすぐった。
「・・・・・・ホントに?」
「ああ」
「嬉しい!ユーリ、ユーリも私と一緒なんだね!」
目を瞬き、小さく首を傾げるにユーリが頷き返すと、
飛び上がらんばかりに、が目を輝かせて喜んだ。
ユーリは返事の代わりにぽんぽんと彼女の頭を優しく撫でる。
すると嬉しそうには笑みを浮かべた。
「えへへ、やっぱりユーリのこの手が一番だなぁ・・・・・・」
「手だけか?」
「え!?え、っと・・・・・・手だけ、じゃないけど・・・・・・」
ユーリが返した言葉には驚き、その後顔を赤くして、
だんだんと小さくしぼんで行くその声に、ユーリは小さく笑う。
「なあ、、1+1はなんだ?」
「それぐらい、私にもわかるよ!2、でしょ?」
「あたりだ。いい子だな、」
「もう、ユーリ、子供扱いしてるでしょ!?」
再び頬を膨らませて怒るに、ユーリは今度こそ声をあげて笑った。
そうすれば、ぽかぽかと可愛らしい拳がとんでくる訳で、
ユーリはその手を笑って掴んだ後、真剣な目をに向けた。
「―――そう、1+1は2だ。
今日はも嬉しいし、オレも嬉しい日だ。
ということは1+1で嬉しさも2倍だ。
それだけで特別な日って感じがしないか?」
「・・・・・・そう、そうだねユーリ。特別な日だね!!」
「だろ?」
「うん!」
「だから今日はこんな事もしていいと」
心底嬉しそうに、ユーリに頷き返すに、
にやりと笑みを浮かべたユーリは、その小さな顎を掬ってすかさずキスをした。
「・・・・・・!」
「顔、真っ赤だぜ」
「・・・・・・もう、ユーリ!!」
の唇から自分の唇を離すと、声を失って立ち尽くすに、ユーリは再びにやりと笑みを浮かべる。
するとさらに顔を真っ赤にしたが、
つい先程まで繋がっていた口を隠すかのように、慌てて両手で覆った。
「っはは。さ、そろそろ戻ろうぜ。
せっかくの料理が冷めちまう」
それに笑って返すと、ユーリはのその腕を優しく掴み引っ張った。
思わず皆の前から連れ出してしまったが、
彼らはきっと温かな料理を目の前に、ずっと待っていてくれているはずだ。
が小さく頷き返すのを確認すると、ユーリは歩き出す。
漂う甘い香りと、与えられる温かなぬくもり、幸せは確かにここにあり、それは共に歩き続けてくれている。
今日はやはり一番の誕生日であるだろう。
夕闇へと移ろい行く空の中、ユーリは繋いだ手をぎゅっと握り締め、その顔に優しく笑みを浮かべた。
1+1=?
(みんなの嬉しさも合わせたら∞だね!!)(いや、オレはのだけでいいんだが・・・・・・)
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10000HIT記念フリーリクエストのお話です!
ミキアルさまに捧げます!!
リクエストはユーリかレイヴンどちらかの誕生日パーティとのことだったのですが、
思いついたのがユーリの方だったのでユーリにさせていただきました〜。
なんかシリアスな設定とか入っちゃってますが、
甘いのを目指したつもり・・・・・・です・・・・・・!
オールキャラっぽいのは以前やったのでこんな感じで。
今思えばレイヴンにもできますね、この話(笑)
リクエストありがとうございました!
ミキアルさまどうぞ貰ってやってくださいなー。
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