「おつかれさま、ユーリ」


下町での一仕事を追え、自分の部屋へと戻ったユーリを、微笑を浮かべたが出迎える。
それにただいまと返し、ユーリはテーブルへと向かった。
そのテーブルの上には出来立てのの手料理。


「どう?ユーリ」
「なかなかいけるんじゃねえか」
「そう?良かったぁ」


聞いている限りではまるで新婚の様な会話だが、別にそう言うわけでもなく、
たまたま新作のスイーツを思いついたが、試食と称しての毒見をユーリに押し付けに来ただけである。
むしろユーリとしては毎日でもに出迎えて欲しいのだが、
鈍感娘である彼女を落とすにはまだまだ日が掛かりそうであった。


「んで、そいつはどうすんだ?」
「デューク!!」


先程からずっとそこに立っていた男を、嫌そうにユーリが指し示すと、
今頃気付いたのか、驚いて声をあげる


「どうしたの、デューク、こんな所まで来て・・・・・・」
「こんな所ってなんだよ」
「デューク、ちゃんと食べてる?
 また痩せたんじゃない?
 ほら、これでも食べて」


まがりなりにも、ここは自分の部屋で、
狭いながらも悠々自適な生活をおくっていたユーリは、の言葉に不満げに声を漏らした。
しかし、は全くそれを気にせずデュークに駆け寄り、
それまでユーリの前に置いてあった料理を、彼の前へと差し出した。
それを見たユーリは電光石火の勢いでから皿を奪い取る。


「もう、ユーリ!」
「これはオレの」


頬を膨らまして怒るを尻目に、ユーリは料理をおいしそうに頬張り、皿だけを彼女に返した。


「・・・・・・仕方ないなぁ・・・・・・。
 デューク、ちょっと待ってて、今別なの作って来るから」
「わかった」


デュークは小さく頷き、に言われるがままに、指し示された椅子に腰掛けた。
それは丁度ユーリの目の前、今までが座っていた椅子で、
ユーリとデュークは何の因果か、テーブルを挟んで向かい合う形となる。


「で、あんた結局何しに来たんだ?
 まさか本当に飯食いに来たわけじゃないんだろ?」
「お前には関係ない」
「・・・・・・あっそ」


エプロンを締め、台所へと向かったの後姿を見送った後、デュークに目を向け問うが、
まるで取り付くしまもない彼の態度に半ば呆れ、ユーリは溜息を吐いた。

しかし、なんにせよ彼の突然の訪問に、との二人きりの時間を邪魔されたのは間違いない訳で、
テーブルに肘をつき、頬に手を沿えた格好で、再びじろりとデュークを睨む。
すると、調理を終えたが丁度戻ってきて、手に持ったお皿をコトリとテーブルの上に置いた。


「はい、デューク召し上がれ」


差し出されたのは見たこともないオレンジ色をした物体。
漂う甘い香りと、その形態から、ケーキだということは分かった。
けれども、あまりにもそれがオレンジオレンジ色していて、ユーリはつい目を瞬く。


「なんだソレ」
特製キャロットケーキよ。デュークってウサギみたいでしょ?」


前に作ってみたらデュークも気に入ってくれたみたいで、おいしそうに食べてくれるのよ、との
確かに白くて、目が赤くて、無口な所といい、ウサギみたいではあるが、
それで人参とはいくらなんでも安直過ぎるのではないか。


「だからってなぁ・・・・・・」


と、言葉を漏らすが、気にせずもくもくと食べ続けるデュークを横目に見て、
ユーリはひょいと横からソレを摘む。


「お、けっこういける」


もっと人参の存在が全面に押し出された味をしているのかと思ったが、そう言うわけでもなく、
程よい甘みとふんわりとしたスポンジがおいしい、正に特製ともいえるケーキであった。
舌鼓を打ち、再びケーキに手を伸ばしかけると、ぺしりとその手がによって叩かれる。


「ちょっと!ユーリはもう違うの食べたでしょ!」
「いやいや、のものはオレのもの。
 オレのものもオレのもの、だ」
「なに、そのじゃいあにずむ・・・・・・」


まるで悪びれもせずユーリは言うが、あまりにも横暴なその言葉に、は小さく溜息を吐く。
その後、ちらりと横を見ると、ケーキを取られた当の本人、デュークはまるで気にもせず、
やはりもくもくとフォークで切り取ったケーキを口に運んでいた。


「デュークも、少しは何とか言ったらどうなの!?」


呆れて口を出すと、デュークはようやくフォークを動かす手を止め、顔を上げる。


「・・・・・・おい、お前」
「ユーリだ」
「お前、食べる時は座れ、行儀が悪いぞ」


じっと、ユーリを見つめて言った言葉は、おおよそ、の期待していたものとは違く、
ケーキを摘み食いする際に中腰になったユーリのマナーを指摘するものであった。
それはケーキを取られたことは全く気にもしていないということで、
は「はぁ・・・・・・」と溜息を吐き、がっくりと肩を落とした。



「なぁに?デューク」
「おかわり」
「・・・・・・わかったわ、ちょっと待っててね」


次いでかけられた言葉に、少しの期待を込めて顔を向けるが、
そこにあるのは無表情なデュークと差し出された皿だけで、
少々の沈黙の後、は諦めて皿を受け取り、台所に向かう。


「それと、お前」


がテーブルから離れると、デュークは彼女の背から目を離し、
ユーリにじっとその目を向けた。


「ユーリだ」


そして、その言葉に再び訂正を入れるユーリ。


「・・・・・・それはお前に譲るが、これは譲らない」


しかしデュークはやはりそれを無視して立ち上がり、
おまたせと戻ってきたが置いたおかわりのケーキを視線だけで指した後、
何の話?と首を傾げるを後ろから抱きしめた。


「え、ちょっとデューク!?」
「・・・・・・それは宣戦布告ととっていいのか?」
「構わない」


デュークの突然の行動に、慌てるを尻目に、睨みあう二人。
それは正に一触即発状態で、彼らの間には今にもばちばちと火花が散りそうであった。


「ユ、ユーリまで、何言ってんの!?
 私は誰のものでもないのよ!?」


そんな中、じたばたともがいてやっとデュークの腕の中から脱出したが、
デュークの行動だけでなく、ユーリの告白とも言える言葉に、顔を赤くして叫んだ。


「いーやオレのだ」「いや、私のだ」


しかし、それを同時に否定する二人。


「いい度胸だな」
「・・・・・・お前もな」


カチャリと音を立てて抜き身の剣が目の前に引き出される。
そして交差する二人の視線。


「ちょ、ちょっと二人ともやめてよ!!」
は下がってろ」
「退いてろ、


あまりにも横暴な二人の言葉に絶句していたは、剣の音にはっと正気を取り戻し、
今にも戦闘を始めそうな二人の間に割って入った。
しかし、ユーリ達はそれには耳を貸さず、を脇にどけて、ガキィーンと剣同士を打ち付けた。
間近で睨み合った後、一旦後ろに飛び退り、再び前方に攻め、つばぜり合いを始める。
お互い譲れぬものがあるからか、その実力は拮抗していて、
ぎりぎりと音が聞こえてくるほどに暫くそのまませめぎあっていると、
その時、


「いいかげんにしなさーい!!!」


という声と共にピシャーンと音を立て、ユーリとデュークの間に雷が降った。


「!!」
「どわっ!危ね!!」


慌てて後ろに飛んでそれを避け、雷が降ってきた元、つまり先程叫んだ声の主を振り返れば、
わなわなと肩をふるわせて、怒りの形相でこちらを見据えるがいて、
驚いたユーリとデュークは、一旦争うのやめ、顔を見合わせた。
は双方が武器を下ろしたのを見て取ると、つかつかとユーリの傍まで歩いていき、その手から剣を奪い取る。


「もう、ユーリはすぐに喧嘩売らない!
 ほら、デュークもそんな物騒なものしまう!!」


そう言って、はデュークが手にもつ剣をも指差した。
しかし、喧嘩を始めたからには後には引けず、なおも構えをとかず睨みあう二人に、の追加の怒鳴り声が響く。


「聞いてるの!?」
「わかったよ・・・・・・」
「・・・・・・」


その声に、ユーリはやれやれと肩を落とし、デュークはこちらに背を向ける。
両手を腰にあて二人を睨んでいたは、それを確認するとにっこり笑った。


「それでよし!」


その満面の笑顔の前にはユーリも完全に毒気を抜かれて、軽い溜息が漏れる。
なんにせよお互い尻に轢かれるのは同じのようだ。
未だこちらに背を向けたまま動かないデュークを見やり、ユーリは口元に笑みを浮かべた。


「この続きはまた後で、だな」


には聞こえないように、白い背中に小さく囁くと、その肩がぴくりと僅かに動いた。
それに再び笑みを浮かべ、ははっと声をあげてユーリは笑う。


「何?どうしたの?」


不思議そうにが首を傾げるが、手をひらひらと振り、に笑いかけた。


「いや、なーんも。
 デュークと仲直りしてたんだよ。な?」
「・・・・・・」


のことは別にして、意外とこいつとは気があうのかもしれない。
ユーリが振った言葉に対して迷惑そうに無言で返すデュークに、ユーリは再び声をあげて笑う。

なんだか楽しそうなユーリの様子に、「ホント!?」と嬉しそうに目を輝かせると、
胡乱げにこちらを見つめるデューク。
ユーリはのその頭をぽんぽんと撫でた後、テーブルへと戻り、椅子に座りなおした。
目の前には特製のキャロットケーキ。


「ほら、せっかくだし食べようぜ」
「うん!」
「・・・・・・」


ケーキをほおばり、達に声をかけると、が嬉しそうに椅子へと座る。
対して、無言で立ち尽くすデュークに、「座らないのか?」とフォークで空いてる椅子を指し示すと、
デュークはくるりと踵を返す。


「デューク!どこいくの!?」
「・・・・・・また、来る」


の問いに、静かに返すデューク。
それはまたケーキを食べに来るのか、それとも喧嘩の続きをしに来るのか、ユーリには分からなかったが、
再び会い見えることは間違いなさそうだ。
その時のことを考えると、自然、笑みが浮かんでくる。


「どっちも譲らねえけどな」


ぼそりと、小さく呟いた言葉は、、デューク双方に届くことなく、
キャロットケーキと共に飲み込まれて消えた。





Black  or  White?

「さしずめユーリは黒ウサギってとこかな」
「ウサギから離れようぜ・・・・・・」
「・・・・・・」
















































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クド様のサイトとの相互記念夢でございます!!
リクエストはユーリVSデューク、・・・・・・だったんですが・・・・・・!
なってるのかな、これ・・・・・あせあせ。
最強はヒロインさんってことで。そしてさりげなくユーリと幼馴染設定。
黒いのも白いのも両方私は欲しいです(きっぱり
クド様!リクエストに答えられてるか分かりませんが(汗
よろしければ貰ってやってくださいませ><