「デューク、今度はあの店いこ!」


活気ある町の商店街、行き交う人々の生活の証にだいぶ磨り減った石畳の上を軽やかな足音が響く。
そしてそれに続く、ともすれば聞き逃してしまいそうなほど静かな足音。
もはや何度目か知らぬ同じ呼びかけに、けれどもデュークは文句も言わずに連れたって歩いていた。
まぁ、抗議の言葉はには通用しないと、とっくに分かっていたからであるが。

ともあれ、の指差す方向へと歩きかけて、不意にデュークは足を止めた。
何か後ろに引っ張られる感覚を感じたからだ。
足元を見れば、小さな女の子が泣きそうな顔をして、彼のコートの裾をぎゅっと掴んでいる。


「・・・・・・何だこれは」
「デューク・・・・・・?どうしたの?」


デュークの不審気な声を聞きつけたのか、続いて来ないデュークを不思議に思ったのか、店先に向かったが戻ってくる。
少し困ったような表情を浮かべたデュークを珍しいと思いつつも、彼の視線の先を見て、はきょとんと目を瞬いた。
小さくぽかんと開いた口元には手のひらが添えられている。


「あっは、どうしたのその子。
 デュークの子供??なーんてそんなわけないか」


自分で言った言葉に対し、は可笑しそうにくすくす笑った。
それに今度はどちらかといえばに似たくりくりの大きな瞳の女の子がきょとんと目を瞬く番だった。
どうしてが笑っているのか分からないといった風だ。


「お嬢ちゃん、お名前は?」


ごめんごめんと小さく片目をつぶると、は女の子の前にしゃがんだ。
優しく頭をなでると、不安そうな瞳がの顔にじっと注がれる。


「リリア・・・・・・」
「リリアちゃんか〜。
 可愛い名前だね〜」
「・・・・・・ほんと?」
「うんうん、デュークもそう思うよね?」
「・・・・・・ああ」


ニコニコと微笑み返してようやく漏れ聞こえた名前は、女の子にぴったりの可愛い名前だった。
それを褒めてあげると、女の子は俯きがちだった顔をぱっと上げる。
よっぽど嬉しいのだろう、先ほどよりも頬に赤みが差していた。

しかし続くの言葉には、再び顔を歪ませてしまう。


「リリアちゃんはどうやってここに来たの?ママかパパは?」


女の子にとってそれは禁句だったようだ。
大きな瞳には涙が滲みはじめていた。


「そっかぁ・・・はぐれちゃったかぁ・・・・・・」
「ママぁ・・・・・・」


が小さく嘆息すると、ついに女の子は泣き出してしまう。


「どうしよう、デューク?」
「好きにすればいい」


ぶっきらぼうな返答ではあったが、デュークも少なからず気にしているのだろう、
彼の視線の動きからそう見て取ったは小さく微笑む。
彼がそう返すだろうことは想定済みであったのだ。


「お姉ちゃんと一緒にママさがそっか」


はそれまでぽんぽんとあやすように女の子の背中を撫でていた手を、今度はすっと彼女の前に差し出した。
女の子がひっく、と小さくしゃっくりを漏らす。
にっこりと微笑んで涙に濡れた頬をぬぐってやると、すっかり泣き止んだようだった。

しかし、の差し出した手をじっと見つめたかとおもえば、
デュークのコートの裾をぎゅっと握って後ろに隠れてしまう。


「デューク。だいぶ気に入られちゃったみたいね」
「・・・・・・迷惑だ」
「またまたそんなこと言っちゃって」


まんざらでもないくせにと、デュークを茶化せば、返ってきたのは心底迷惑そうな表情で。
いつもなら、長い付き合いのに対して、それはひどい仕打ちではないかと抗議を述べるところであったが、
今は非常時、ここは水に流すことにする。


「うーん、どうしよっか、この人混みだと向こうもわかり辛いだろうし、目印になるものがあれば・・・・・・」


そこでふっとはデュークに視線を移した。
次の瞬間その顔に浮かんでいたのは清清しいまでの笑顔だった。




















「なかなか見つからないねぇ・・・・・・ママ」
「ふぇ・・・・・・」
「これはこれで目立つものがあるんだけど・・・・・・」


そう言いながら、はチラッと横目で隣を見る。
本人はまったくの無自覚であるが、すっと伸びた鼻筋に整った口元、長い睫毛に翳る紅の瞳、
どれをとってもデュークは人間離れした美貌の持ち主である。
加えて長い銀の髪を翻してすらっとした長身を淀みなく動かして歩く様など、神々しいといっていいほど。
その彼が今は小さな女の子を肩車して歩いているのだ、目立たないはずがない。

そう、が考えた方法とは、デュークに肩車させて悪目立ちしちゃおうぜ☆作戦なのであった。
向こうからこちらを見つけてもらえる画期的な方法である。
重ねて言うと、断じて先ほどの報復などではない。


「うーん・・・・・・」


視線を再び正面へと戻すと、は小さく唸った。
他にいい方法があれば試したいところなのだが・・・・・・。


これといっていい考えが思いつかないまま、それから少し歩いたところで、たちは少し開けた場所に出た。
そこは人々の憩いの広場になっているようだった。
と、ここでぴんとの頭にいい考えが閃く。


「よーし、久々のちゃんリサイタルといきますか♪」
「リサイタル・・・・・・?」
「あ、なーによその目。
 これでもご近所さんには人気あったんだからね!?」
「お姉ちゃんお歌歌うの?」


不審そうな目を向けるデュークの頭上で女の子の瞳が嬉しそうに輝く。
どうやら女の子は歌が大好きなようだ。
歌うのは久しぶりであったが、思わぬところで女の子の喜ぶ顔を見られたは満面の笑顔で頷いた。


「うんうん。
 まー見てなさいって。
 リリアちゃんのママの一人や二人ちゃちゃっと見つけてみせますから!」
「ママは一人しかいないよ?」
「そ、それは言葉のあやというか!」
「やるならさっさとやるぞ」
「はーい」


人の隙間を分け入って広場の中央に陣取ると、はこほんと一つ咳払いをした。
我ながら緊張しているみたいだ。
デュークの方をちらりと窺うと、彼は小さく頷いてくれる。
一瞬の後、の唇から流れ出たのはの故郷で流行っていた少し古い時代の流行歌であった。















が最後の一節を歌い終わると、わぁっと大きな拍手が沸き起こる。
たどたどしく始まったの歌は最初はだいぶ拙かったが、
次第に広場全体に染み渡り、いつの間にか広場の人々全員がたちを囲っていた。
それは皆にどこか懐かしさを感じさせるような、不思議な歌声だった。


「ママー!!」


集まった人々の中に母親を見つけたのか、女の子が突然叫んだ。
彼女が指差す方向には、確かに彼女によく似た女性が驚いた表情をこちらに向けていた。
デュークが女の子を肩から下ろしてやると、彼女はすぐに母親の元へと走っていく。
しかしぴたっと途中で立ち止まったかと思うと、こちらに戻ってくるではないか。


「なんだ」


デュークが再びしゃがんでやると、女の子はもじもじと恥ずかしそうに俯いてしまった。
けれども意を決したのか、顔をあげ、デュークのきれいな顔に近づいて頬に小さくお礼のキスをする。
そうして今度こそ母親の元に走っていくと、女の子はこちらに向かってぶんぶんと手を振った。


「お兄ちゃんありがとう!!」
「あー!いいなぁ、でゅーくにちゅー・・・・・・」


続くのは心底羨ましげなの声である。
じとーっと注ぐ視線の先はすぐ近くのデュークの顔だ。
先ほどの小さなキスなどなんとも思っていないのか、いつもの涼しげな表情がそこにはある。
頬でもいいがどうせなら・・・と立ち上がりかけのデュークの腕を引っ張ると、はえいっと唇を重ね合わせた。

と、そこで、先ほどよりも大きな、いいぞーねーちゃんとか、もっとやれーとか、やんややんやと喝采が起こる。


「あ、どーもどーも」


囃し立てる観客に満面の笑みで手を振ると、気を良くしたはデュークを振り返った。


「えっへへ。皆もああ言ってることだしデューク、もっかいする?」
「付き合ってられん」


対してデュークはさっさとこちらに背を向けて歩き始めてしまう。


「あ、待ってよデューク!!」


慌てて後を追いかけると、デュークの足並みが目にみえてゆっくりになる。
の足並みに合わせてくれているのだ。
少し走ってデュークを追い抜いた後、くるりとデュークの方に向き直ったはにこにこと微笑みながら器用に後ろ向きに歩き始めた。
デュークのちょっとした気遣いが、には嬉しかった。

広場を抜けて路地に差し掛かったところで、は小さく首を傾げる。


「それにしてもかわいかったねリリアちゃん。
 私もあんな子欲しいなぁ・・・・・・」
「・・・・・・」
「やっぱり子供なら女の子よね、女の子。
 しかもデューク似の美人な女の子。
 大きくなったら男の子にモテモテになったりしちゃって。
 で、そうなったらデュークがお前にうちの子はやらーん!とか。
 うっわ、イメージ沸かない」


想像というより、もはや妄想は膨らむばかりであった。
傍らのデュークを置き去りにしての頭の中は未来のイメージで持ちきりだ。


「あーでもデューク似の男の子もいいなぁ・・・・・・。
 そんな子がいたら私思いっきりかわいがっちゃいそう・・・・・・」
「・・・・・・」
「あ、デューク妬いちゃう?妬いちゃう?
 安心して!デュークへの愛と息子への愛はべ・つ・も・のだから!」
「・・・・・・」
「ちょっとぉ〜そんな深い溜息つかなくてもいいじゃない!」


デュークは終始無言であり、誰もがが独り言を言ってるようにしか見えないやり取りであったが、
にはデュークの感情のわずかな変化も見過ごさない自信があった。
たった今確実に、デュークは呆れた溜息をついたのだ。
立ち止まり、それに批難の声を上げると、一歩先に進んだデュークが振り返る。


「・・・・・・」


呟いた言葉は小さな声だったが、にはばっちり聞こえていた。
嬉しくなったは思わずデュークの腕に飛びついた。


「うっふふ。デュークがそう言ってくれるなんて嬉しいけど・・・・・・」


彼の胸に頬を摺り寄せぬくもりを堪能した後、はがばっと顔を上げる。
我慢しなければ漏れてしまう笑みを堪えて、きっと眼差しを空に向けて。
そして高らかに宣言した。


「デュークの隣はたとえ娘にだって、譲らないんだからね!」




A HAPPY DAY!












































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5万HIT企画、フリリク夢ですー。。
イオさんリクエストでデューク夢!!
おまたせしてすいませんでした><
特に指定がなかったので自由に書いてしまったのですが・・・・・・。
以前プロポーズのお話をいただいたのでそれに続きそうな感じ?にしてみました!!
ヒロインの性格はまったく違いますが(苦笑
私はデューク相手にぐいぐいひっぱっていくヒロインが好きらしい(笑)
大人なヒロインも大好きですけどね!!
えと、それで、デューク似のお子様実装まだですか?(マテ
絶対可愛いに違いないよ・・・・・・。
ではではイオさま。よかったらもらってやってくださいな!!