デュークはいつもふらりと現れる。
大抵が、が会いたいなって思った時、
ちょうど狙い済ましたかのように来るから不思議なもので。
しかし今日のデュークの様子はいつもと違っていた。


「ちょっと、どうしたの、デューク、顔色悪いわよ?」


久々に会ったデュークの顔色は、この上もなく悪かった。
デュークには自分に無頓着すぎる嫌いがあって。
だからこそはいつも気にかけていたのだが、
最近は互いに忙しくて会っていなかったのだ。

はとにかく彼を落ち着かせようと、
ぱたぱたと冷たい水の入ったコップを手に駆け寄った。
すると、デュークがぼそりと呟く。


「・・・・・・を・・・・・・」
「え?」


それはあまりにもかすれた呟きで。
は思わず聞き返した。


「・・・・・・ホワイトデーのお返しを考えていた」


再びデュークが口を開いた。
それは先程のものより良く聞こえたが、は眉を顰めていた。
とっても嫌な予感がする。


「まさか、それで寝てないとか言うんじゃないでしょうね」
「・・・・・・」


の鋭い指摘に、デュークは答えない。
けれども沈黙は肯定と取れた。
つまりは図星であったらしい。
まさかとは思ったが、あまりにも予想通りな結果に、は小さく溜息を漏らした。


「馬鹿ね、そこまでしなくも、お返しなんて適当でいいわよ」
「そうはいかない」
「もう、あなたも融通が利かない男ね」
「・・・・・・」


分かってはいたが、デュークもこうと決めたら、譲らない男である。
ホワイトデーのお返しを眠れなくなるまで考えてくれた。
それは素直に嬉しい。
しかし、体調に不調をきたしてまでとなると、話は別であった。


「しょうがないわね、お返しは後で一緒に考えるとして、
 今は寝なさい、いいわね?」


今度こそ深い溜息を漏らすと、はコップをテーブルに置いて部屋の奥を提示した。
先程干したばかりの、ふかふかのシーツがかけられたベッドがそこにはあった。


「あ、ちょっとデューク!?」


デュークの反応を窺おうと、が後ろを振り返った時、彼の体がぐらりと傾いだ。
それにはさしものも慌ててしまった。
はしっとぎりぎりでデュークの体をつかむが、いかんせん、体格差に無理があった。
よたよたとの体は後ろに後退していき、膝からドサッとベッドに倒れこむ。

丁度後ろにベッドがあって助かった。
が小さく息を漏らすと、こてんとデュークの頭が、の肩に凭れ掛かった。
銀に輝くデュークの髪が、頬をくすぐって少しこそばゆかったが、
は優しげな表情で、彼の髪を撫でた。
触ると絹糸のように細い彼の髪も、今は長い睫毛に閉じられた彼の瞳も、何もかもが、愛おしかった。


「         」
「!!」


少し低い、けれども澄んだ声音。
至近距離で囁かれた言葉に、はびくりと驚く。
何時の間に起きたのか、紅の瞳が、ひたとを見据えていた。


「デューク、聞こえなかった。
 ね、もっかい言って?」
「お断りだ」


本当に聞こえなかったわけではない。
あれだけ近くで囁かれば、聞こえないはずがなかった。
けれどもは何度でも聞きたかった。
目をきらきら輝かせてお願いのポーズをとるが、
デュークはの膝の上にもそもそと頭を乗せた後、目を閉じてしまう。


「そんなこと言わずに!!
 ねぇ、デューク、デュークってばぁ!」


それでもは諦めきれず、デュークの肩をゆすったが、
彼の目は頑として開けられることがなかった。

しばらくして、気持ちよさそうなデュークの寝息だけが、すやすやと、聞こえてくる。


「デュークのケチ」


つんと額をつついた手は、デュークの暖かな手に包まれて。
くすりと笑ったの唇は一つの言葉の形に開かれた。






世界で一シテル

(それは、魔法の言葉。)


































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ホワイトデー第1弾。
デューク夢でございまーす。
デュークならありえそうだよね、って思いながら書きました。
甘甘、甘甘、と自分に言い聞かせながら。
甘くなってますかねぇ!
クリスマスと逆のパターンにしてみました。
ヒロインは特に連載ヒロインてわけでもないですが。

デューク好きさんが増えますように!!
ってことでフリー夢です。
読んでくださってる方、どうぞ貰ってやってくださいな。