「ねえユーリ、ユーリはいつもクリスマス何してるの?」
時はクリスマスの前日。
いつも通りユーリの部屋に上がりこんだは椅子に腰掛け足をぶらぶらとさせた。
その近くには気持ちよさそうに寝そべったラピードがいて。
それに気付いたはラピードに近寄り、そのふかふかな毛並みをそっと撫でていく。
「ん?ああ・・・・・・。
クリスマスはいつも下町のちびっ子どもとパーティだな」
「!、何それ、おもしろそう!!」
同様特に何するでもなく、ベッドにごろりと横になっていたユーリは、
の問いかけに体を起こした。
毎年この時期になると、下町総出でクリスマスパーティーが行われていた。
とくに子供たちのはしゃぎ様といったらなく、
大人たちはその準備に駆り出され、ユーリは子供に好かれる性質から、
もっぱらちびっ子達の相手を任されていた。
飾り付けられたツリーやご馳走、色とりどりの玩具やケーキ。
クリスマスは一年で最大の贅沢の日でもある。
そのことをに告げると、は嬉しそうに目を輝かせ、立ち上がった。
足元では、が突然上げた大声に、ラピードが少し迷惑そうに耳をぴくりと動かしたが、
すぐにもそもそと自分の所定の位置に戻ると、再び目を閉じこちらに背を向けた。
相変わらず我関せずのようだ。
そんなラピードに苦笑しながらも、ベッドから立ち上がり、ユーリはに顔を向ける。
「ちびっ子相手に疲れるだけだぜ?」
「それでもいい!行く行く!!」
聞かずとも分かりきったものであった。
二つ返事で返すに、「んじゃ明日な」とユーリはの頭をぽんぽんと叩いた。
「何これ?」
「パーティーに来る大人は全員かぶるんだよ」
ついでにぽすりと置いた頭の上のものに、が手をやり小さく首を傾げる。
しかし、そのものの詳細にはあえて答えず、ユーリはにやりと唇に笑みを浮かべてみせた。
「ったく、どっちが子供かっての」
その翌日、子供と一緒になってはしゃぎ回るを、
ユーリは呆れたような顔で見つめていた。
ふかふかな赤いサンタ帽子のぽんぽんが、
ぴょこりぴょこりとの動きにあわせて揺れているのが見える。
それは昨日ユーリがに渡したものだった。
言わずもがなユーリはサンタ帽をかぶってはいなかったが、
ていのいい厄介払いをされたのにも気付かず、は嬉々としてそれをかぶっていた。
(いい歳した大人がサンタ帽なんて浮かれたものかぶっていられるかよとのユーリ談)
「あ!ユーリ、みてみてこれ。
このサンタの部分、お砂糖なんだって」
先程まで子供と遊んでいたがケーキの皿を片手にこちらにやってくる。
ケーキの上にはサンタの形をした砂糖菓子が乗っていて。
嬉しそうにそれを指差すを尻目に、
ユーリはそれをひょいと摘んでぱくりと食べてしまった。
「あ〜〜〜!」
「お、案外美味いのな」
「もう!ユーリのばか!!」
「おっと」
ぽかりと怒りの拳を向けてくるを避けながら、
ひょいとユーリはの手からケーキの皿を取った。
おいしそうな苺のショートケーキにフォークを入れ、それを一口、口に入れる。
甘い苺のムースとふわふわのスポンジが絶妙であった。
砂糖菓子のサンタならずもケーキまで食べられてしまったはと言えば、怒り心頭である。
ぽかぽかとユーリを叩いてくるが、本気ではないから痛くない。
ユーリは笑いながらそれを受け流していた。
しかしそれをじーっと見る目が一つ。
それに気付いて顔を向けると、小さな女の子が瞳をきらきら輝かせ口を開いた。
「お兄ちゃんたちって、恋人同士なの?」
「!?」
危うく、咥えたままのフォークを飲み込みそうになる。
無邪気な笑顔が痛かった。
「・・・・・・いや、おれ達は別にそんな・・・・・・
―――っ!?」
ゴホゴホと咳き込みながらもようやく口を開くと、足元に痛みが走る。
そちらを見ればの足が乗っかっていて、
何の真似だと痛みを訴えるユーリに、はにっこりと笑顔を向けた。
「可愛い女の子の夢を壊しちゃダメよ、ユーリ」
「え!?だっておまえ・・・・・・」
の相手は別にいる。
それは周知の事実だ。
内緒話をするかのように耳元に顔を寄せてきたをユーリは吃驚した顔で見る。
すると、不満そうに頬を膨らませたが両手を腰に当てた。
「何よ、私相手じゃ嫌ってワケ?」
「いや、別にそんなことは・・・・・・」
「じゃあ決まり!今日一日ユーリと私は恋人同士、ね」
ぱちんと手のひらを重ね合わせると、
はユーリの腕に自分の腕を絡ませ、女の子にウィンクを返した。
「そうなの、お姉ちゃん達らぶらぶなの」
「やっぱり!」
の言葉に、先程よりも更に瞳を輝かせ、女の子はいいなーと羨ましそうにユーリ達を見る。
「あたしも来年は素敵な恋人ができるといいなぁ・・・・・・」
「あなたならきっとできるわよ」
「ホント!?」
「ええ」
が大きく頷いて見せると、女の子は嬉しそうに飛び上がった後、
「お姉ちゃんありがとう!」と言って向こうへ走って行ってしまった。
「かわいいなあ・・・・・・。
ね、ユーリもあんな妹欲しいと思わない?」
その後姿を羨ましそうに見送った後、が振り返った。
すると、ふわりと、ケーキよりも甘い香りが漂う。
それは普段が身にまとう香りであった。
もう限界である。
「!?」
驚くには構わずに、ユーリはその体をぎゅっと抱きしめる。
甘い香りがユーリをも包み込んだ。
「ちょっとユーリ!?」
「おれ達は恋人同士なんだろ?」
「そ、そうだけど・・・・・・」
あの女の子はどっかいっちゃったし・・・・・・。
もう必要ないんじゃとか、ごにょごにょと言う。
その目は明らかに泳いでいた。
甘い香りを目一杯堪能したユーリは腕から力を抜くと、の首元に顔を寄せていく。
一瞬の後、白い肌に赤い小さな花が咲いた。
「!!」
「これで今日一日はおれの物、だな」
「〜〜〜〜〜!!」
憎らしいほどに艶やかに、にやりと唇に笑みを浮かべて言ったユーリの言葉に、
はワナワナと唇を震わせているだけである。
さすがの出来事に声も出ないらしい。
「ユーリのばか!!!」
パシーンという乾いた音が響き渡る。
それは我に返ったがユーリの頬を張り倒してばたばたと走り去っていく音であった。
それを見送りながらも、ユーリは一人、言ちる。
「ちょっとやりすぎた、か・・・・・・」
頬は手のひらの形に赤くなっており、
傍から見れば痴話喧嘩の末路である。
けれども後悔はしていなかった。
少し前までそこにあったの温もりと残り香は、ユーリにとっては名残惜しいものであった。
次の日には平然として現われるだろうを前に、
どうやって自分は過ごそうか、そればかりを考えユーリは瞳を閉じる。
クリスマスの夜の些細な夢。
されども幸せな一時、それを知っているのはただ、夜空に瞬く明星のみであった。
メリークリスマスを君と共に
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クリスマスフリー夢第2弾、ユーリ夢でっす。
再びエンディングその後(仮)設定。
むしろ全部それで通そうかな、なんて。
なのでLaVo連載ヒロインでございます。
私の中ではユーリの片想いの方向性が強いです。
LaVoヒロインさん他の二人と(主にデュークと)らぶらぶだからなぁ(笑
まぁそんなことで止まるエローウェルさんじゃありませんが!!
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