「こぉら、ちゃんと人の話聞いてる?」


ことりとサイドテーブルに置いた二つのカップから珈琲の芳ばしい香りが匂い立つ。
その一つを口元に引き寄せて、改めては横を見た。


「ん、ああ、なんだって?」


気だるげにベッドにごろりと寝転んでいる彼、アルヴィンは先程からこの調子で生返事を返すばかりだ。
ははあ、とそれと気づかれない程度に小さなため息を吐く。


「どうせまた、元カノのことでも考えてたんでしょ」
「っ・・・・・・」
「まぁいいけどね、あたしには関係の無いことだし」


彼がそのような状態になるのは一度や二度ではなく、その理由を、は知っていた。
ほんの僅か、息を呑んだアルヴィンに、はぐいとカップの中身を飲み干した。
じわりと、珈琲の苦味が、口の中に広がっていく。


「おいおい、そりゃないぜ。
 俺とおたくって深ーい仲じゃなかったの」
「そうだったかしらね」


広がった苦味は消えることが無く、
は手をつけられず取り残されたカップを一つ、じっと見つめた。


「そうすねんなって。
 、悪かったよ」


すっと伸びてきた手に腰を絡めとられれば、すぐにぎゅっと抱きしめられる。
耳元にかかる熱い吐息も、首筋に降りてきた優しい唇の感触も、今は全て自分に与えられたもの。
だけど……。

は大きく身じろぎをすると、手に触れたアルヴィンの胸を小さく押しやった。
そうして、彼の顔を見上げる。


「仕事」
「ん?」
「行かなくていいの?」


ベッドサイドでかちりと動いた時計は、
昨日、彼が仕事とこぼしていた約束の時間の30分前を指していた。
触れていた体が、ゆるりと離れていく。


「・・・・・・もうそんな時間か」


そう、この顔だ。
ふとした瞬間に、彼が浮かべる表情。
くしゃりと顔を歪ませたそれは、まるで帰るべき場所を見失った、迷い子のようで。

立ち上がり支度を始めたアルヴィンの指が、ようやく置かれたままのカップのもち手を掴む。
もうすっかり冷めてしまっただろうに、
少しずつ空になっていくカップを見つめながら、は彼に声をかけた。


「アル」
「んー?」
「いってらっしゃい」


たとえ一時でも、寄る辺なく彷徨い続ける彼の、止まり木にでもなれれば良い。
小さな微笑みを浮かべて、は空になったカップを重ね合わせる。


「・・・・・・また来るよ」


ふ、と唇に優しく触れるだけの口付けはまるで砂糖菓子のように甘く溶けて。
かしゃりと、二つ重ねたカップが音を立て鳴った。






止まり木




































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連ドリサーチさん企画のリンクラリーに提出した作品です☆
展示期間が無事終了しましたので公開です〜。
他サイト様の企画なので、滅多に書きそうにないお相手で書こうかなと(笑)
エクシリアのアルヴィンがお相手です!!
ちょっと大人な雰囲気を醸し出せたらな〜とがんばってみました!
が、上手く書けたかどうかは・・・!
うん、まぁ・・・精進します・・・。
たまにはこんな感じもいいよね〜?