「ユーリちょっと涼ませて!」
残暑厳しいある日の夕方。
ユーリの部屋にノックもせずに飛び込んできたのは、隣人のだった。
勝手知ったる他人の家。
は住人の許可も得ずにずかずかと上がりこむと、窓辺に陣取り座り込む。
「は〜やっぱりこっちのほうが涼しい」
風向きの関係か、夕方ともなればほんのささやかではあるが、
風が入り込んで来るユーリの部屋の窓際はのお気に入りのようだった。
シャワーでも浴びた直後なのだろうか。
の髪は少し湿っていて、
ベッドで寛いでいたユーリの横を通り過ぎる時、ほんのりと石鹸の香りが漂う。
「お前、またそんな格好で・・・・・・
食われても知らないぞ」
タンクトップにショートパンツ。
健康的に日焼けした肌を惜しげもなく晒すその格好は、
曰く、涼しくて楽チンスタイル!!だそうだが、
ユーリからすれば危なっかしいほどに無防備な姿である。
この夏、何度も忠告したのだが、とんと彼女には分からないらしい。
大きく溜息を漏らしたユーリに、はキョトンと目を瞬いて小さく首を傾げた。
「何に食われるの?」
「・・・・・・さあな。虫とかじゃねーの」
「そういえばさっき虫に食われたんだった。
もう、かゆくてかゆくて」
そう言って、さらに無防備に二の腕を見せるものだから、
ユーリの胸にちょっとした悪戯心が沸いてくる。
柔らかそうな二の腕の内側、ぽつんと赤く腫れた部分は確かに虫に食われたようで。
「消毒してやろうか」
「え?」
再びキョトンと目を瞬いたの腕を引っ張ると、
ユーリは彼女の二の腕に唇を寄せて、強く吸い付いた。
すると、赤い虫刺されの痕の上に、小さな赤い花が咲く。
会心の出来だった。
しかし次の瞬間、バシッと頭を叩かれる。
「いてっ」
「なにすんの!」
「何って、消毒」
してやったり。
顔を真っ赤にして肩を震わせるににっと口の端を上げ笑ったユーリの笑顔は、
とてつもなくいい笑顔だった。
唖然として二の句が告げないのか、は口をパクパクと開けるばかり。
首をぎこちなく動かして、ユーリに吸われた二の腕と、
ユーリの顔を交互に見たが次に取った行動は、くるりと回れ右をする事だった。
「・・・・・・狼にこれ以上食われる前に退散することにしまーす」
「わかってんじゃねーか・・・・・・」
冒頭の言葉の、いまさらの返答。
追って掛けた言葉は当然のごとく無視される。
そそくさと去るの後姿に、ばたんと容赦なく閉められる扉。
再び餌のおあずけを食らったユーリは、
秋空に変わり行く空を恨めしげに見つめると、そちらに向かって大きく溜息を吐いた。
秋空モラトリアム
--------------------------------------------------------------------------
4周年記念夢第1弾、ユーリ夢です!
ちょっと季節が若干外れた気が否めない。
これ考えてたの8月下旬だったんですよ・・・・・・。
まだ暑かったんですよ・・・・・・。
まぁいいか☆
なんか、ユーリ視点で書くの難しかったです・・・・・・。
短いからさくっと書けるはずが書けなかったよ!
うん、狼さんのおあずけはまぁデフォですよね☆
|