かつかつかつ
バターン!!


「ガイアス、デートするわよ!!」
『は?』


扉を盛大に開け放ち宣言したに、部屋の中の二人の声がはもった。
執務室に籠もって仕事をしていたガイアスとウィンガルは、
その唐突さに、つい訪問者をまじまじと見てしまった。

今日はクリスマスだった。
なのに男二人は狭い部屋に籠もって仕事三昧。
あまりにも予想通りの光景に、は声を張り上げた。


「だから、で・ぇ・とするわよ!」
「・・・・・・、ここをどこだと・・・・・・」


執務室、要するにこの国の王であるガイアスが、仕事をする場所である。
断じてのような者が来るような場所ではないし、
ましてや、ガイアスをデートに誘いに来るとか。
の常識のなさはうすうす感じてはいたが、ここまでとは思っていなかった。
ウィンガルは頭を抱えたくなる思いだった。
そしてまったく信じられないことに、このはガイアスの姉なのだ。


「あら、姉が弟の部屋を訪問することのどこが悪いって言うの?」
・・・・・・!」
「貴方がそのつもりでも、
 私は貴方の姉であることを捨てたつもりはないわ」


ガイアスは王となる時、昔の名前を捨てていた。
親類に害が及ぶのを怖れてのことだった。
だから姉弟であることを言うのは勿論禁句なのであるが、
はまったく悪びれる様子もなかった。
むしろ負い目がある分、ガイアスのほうが圧倒的に不利だった。
昔からこの姉にはガイアスも勝てないのだ。


「・・・・・・見張りは?」
「通してってちょっとお願いしたら快く通してくれたわよ?」
「・・・・・・」


は可愛らしく首を傾げて見せるが、
明らかにそんなにかわいいお願いの仕方ではないだろう。
浮かべている笑顔が、とてつもなく空々しかった。
しかし二人は声に出して言わなかった。
理由は、後が怖いから、だ。
見張りに同情の念すら感じた。


「ほら、さっさと支度して」
「・・・・・・仕方がないな・・・・・・。
 ウィンガル」
「はっ」


仁王立ちのはてこでも動きそうにない。
幸いではあるが、今日中にやらねばならない仕事は終わっていた。
ウィンガルに命じて書類を片付けると、
ガイアスはやれやれと椅子から立ち上がった。










数分後、部屋の前にはと、ガイアスと、ウィンガルの3人が立っていた。
沈黙が流れる。


「・・・・・・で、何で貴方までついてくるの?」


沈黙を破り、が言った。


「陛下の身が心配だからだ」


悪びれず、ウィンガルが言った。


「心外ね。私が信じられないって言うの?」


腰に手を当てて、が言った。


「だ・か・ら・こ・そ、だ!!」


すべての文字を強調して、ウィンガルは怒鳴った。

全く言いたくない話であった。
言いたくない話ではあったが、
との付き合いはガイアスに付き従うと決めた日から続いていた。
重々彼女の性格は熟知しているのだ。
はデートというが、一体どこにガイアスを連れて行くのか分かったものではなかった。
信じろという方が無理なのだ。


「・・・・・・生意気な口ね」
「引っ張るな、伸びる」
「ちょっとぐらい伸びたって変わりはしないわよ」


前々からウィンガルのに対する態度は、ガイアスに対するものと雲泥の差があった。
ウィンガルには年上への配慮というものが足りないのではないか。
以前、そうガイアスに抗議したことがあったが、ガイアスは苦笑するばかりだった。


「はぁ、しょうがないわね。
 二人とも、ついて来て」


要するに、空気だと思えばいいのだ。
これみよがしに大きなため息を漏らすと、は諦めて目的地へ向かうことにした。















「ここは・・・?」
「私の秘密基地よ」


が二人を案内したのは、大通りから遠く外れた、小さな一つの家だった。
一見した所、普通の一軒家のように思える。
ここにどんな用があるというのか。
そう問うが、は多くは語らなかった。

ガイアスに向かってウィンクすると、
は玄関に立って、トントン、トンと独特なリズムで扉を叩いた。


「・・・・・・お姉さん・・・・・・?」
「カーラ!?」
「おにいさ・・・・・・!?」


遠慮がちに開けられた扉の中から顔を出したのは、
とガイアスの妹の、カーラであった。
カーラも予想してなかったのか、
出しかけた言葉を寸前で止め、目を白黒させるばかり。
平然としてるのは事の張本人であるだけで。


「ほら立ち話もなんだし、入って入って」


話は後だと、3人を家の中に押し入れると、は扉をばたりと閉めた。










「・・・・・・どういうことだ、


家に入って開口一番にそう問うたのはガイアスだ。
テーブルの奥には、が立っている。


「折角のクリスマスだし、家族団らんでもしようと思って」
「しかし・・・・・・」


確かにクリスマスは、家族で過ごす人も多いだろう。
しかし重ねて言うが、ガイアスは家族の縁をすっぱり断ったつもりなのだ。
勝手に会いに来るとは違って、カーラとはもう何年も会っていなかった。
会えば仲を勘繰られる。
たとえお忍びとはいえ、この状況は芳しくなかった。


「アースト、貴方、カーラの気持ちを少しでも考えたことがあって?
 王となったのだからある程度は仕方ないと思うけれど、
 妹を寂しがらせるものじゃないわよ」
「お姉さん、私はそんな・・・・・・!」
「いいから!」


の顔は急に姉の顔になっていた。
家族を思いやる気持ちは誰でも同じ。
弟妹のすれ違いは、姉として見逃せなかった。
あえてガイアスの本当の名前を言って諭すと、
は目の前のテーブルをドンと叩いた。


「とにかく、今日は家族団らんの日。
 私がそう決めたの、分かった?」
「姉さん・・・・・・」


ガイアスとて、やカーラの気持ちを全く考えていないわけではなかった。
良かれと思って決断したことだし、その判断は間違っていたとは思わない。
けれど、話し合いが足りていなかったのも事実のようだ。
は今回、その場を作ってくれたと言う。


「ようやく、姉って言ってくれたわね」


ガイアスが小さく呟いた言葉に、はにっこりと微笑む。
だって、ガイアスが姉と呼んでくれないことに寂しく感じていたのだ。


「さあ、皆座って座って。
 これから私が腕によりをかけて食事を作るから」
「お姉さんの手料理?」


姉の手料理と聞いて、カーラの目がぱあっと明るくなった。
の作る食事はすごく美味しいのだ。


「そうよ、楽しみにしてて」


得意げに腕まくりをすると、は横を向いた。
そこには所在無げにウィンガルが立っている。


「珍しく大人しいのね」
「家族の中に割って入るほど私は無粋じゃない」


ちゃんと聞いていれば来なかった、とウィンガルは言った。
しかし、先に言えばガイアスがここに来ないことは明白だった。


「そう、じゃあウィンガル。
 料理作るの手伝ってくれるかしら?」
「・・・・・・分かった」


ウィンガルが頷くのを確認すると、くるりとはテーブルを振り返った。
すっかり忘れていた。


「あ、そうそう、ガイアス」
「なんだ?」


ガイアスが応えるや否や、は手近な壁のボタンをぽちっと押した。
するとごごごおおという音とともに、玄関先に大きな落とし穴が出現する。
落とし穴の中には二重の罠のオプション付きだ。
を除く皆の血の気がさぁっと引く音が聞こえた。


「この通り、侵入者除けはばっちりだから、
 この家、いつでも使ってね。
 私からのクリスマスプレゼント」


にっこりと微笑んだその表情はまさに悪魔のソレであった。






Regalo di Natale






















































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まだクリスマスだよ間に合ったよ!!
てことでクリスマス夢です。
初のTOX小話。
ガイアスの姉ヒロインたのしすぎるんですけどー!!
クリスマスなのに悪魔☆
でも続かないです、たぶん。
タイトルは思いつかなかったのでイタリア語でクリスマスプレゼントです。
家1個プレゼントとかお金持ちですよね、私も貰いたい。
しかし誰夢だこれ・・・・・・。