「ハロウィンって何をする日なんです?」
「えっとねー。
お化けの仮装をした人たちが家々を歩き回って『悪い子はいないかー』って・・・・・・」
「そりゃ違うだろ」
「むっ。ユーリ突っ込み早すぎー」
「誰かさんに鍛えられてるからな」
小さく首を傾げたエステルに、が答え、ユーリの突込みがすかさず入る。
これは旅を始めてから見慣れた光景の一つである。
ユーリとの付き合いは仲間の中の誰よりも長い。
むしろ"ここまでユーリが育ったのは誰のおかげだと思ってるの"とに言わしめるほど、
(ユーリは全く認めていないが)生まれたときからの付き合いと言ってもいい。
相手の性格の何もかも熟知しているユーリにとってはこれくらい序の口だった。
「違うんです?」
「エステル、騙されるなよ。
こいつの言うことは半分以上が嘘だぞ」
ユーリがまだ素直な子供だった頃、何度の言うところの"可愛い嘘"に騙されたことか。
その内容は今は割愛するとして、ユーリの人格形成はが一端を担っていると言っても過言ではない。
可愛くないと言われようが、誰のせいだと返せばそれまでであった。
「ユーリ。君、ちょっと最近年上に対する敬いって物が足りないんじゃなあい?」
「ほー。お前のどこが年上に見えるのか、教えてほしいもんだな」
「むっかー。背は関係ないでしょ背は!!」
そう、はユーリよりも年上。
けれども誰の目から見ても全くそうは見えなかった。
下手をすればリタと肩を並べるほどの身長でぴょんぴょんと跳ねる様はまるでユーリにまとわりつく小動物である。
それに、まだ足りないものがあった。
「いや、ここら辺が」
そう言ってユーリは問題の部位に上から下へと手を滑らせた。
見事なまでに引っかかる所のない平たい胸である。
触り甲斐のない、と小さく呟けば、ばちーんとユーリの頬に決まる平手打ち。
そうして続いたのは、の走り去る音で。
「ユーリ、それはセクハラです・・・・・・」
「いいんだよ」
一部始終を見ていたエステルが批難の目を向けるが、
頬を紅葉の形に赤く腫らしたまま、ユーリはぶすっとむくれてそっぽを向いた。
「ったく、ユーリったら何時からあんなに可愛げがなくなったんだろ・・・・・・」
宿から少し離れた小さな商店街を歩きながら、昔は可愛かったのに、と小さく呟く。
小さいながらもがやがやと人に溢れる町並みは、下町が連想されて今のには心地よかった。
「・・・・・・全くないってわけじゃないもん・・・・・・」
視線を自分の胸に向けてはぁ、と溜息を吐く。
そりゃあジュディスに比べればだいぶ、いやかなりお粗末だと自分でも思うが、
かといって、全くないわけではないのである。
ユーリは知らないかもしれないが、これでも昔に比べればちょっとは成長しているのだ。
「・・・・・・嬢ちゃん、お嬢ちゃん」
「ん・・・・・・?」
沈んだ足取りを、がえいやと奮い立たせようとしていると、少し先の店先で手招きをしている人物に気づく。
軒先に"珍しいグミあります"という看板を掲げた露店はどうやら道具屋のようだ。
誘われるまま商品をぼんやりと見つめていたではあったが、
ある品物が目に入った瞬間、その瞳はそれまでの暗い空気が一転するほどきらりと輝きを帯びた。
「・・・・・・お前、それ・・・・・・」
「ふふーん、どう?」
「わっ、、それどうしたんです!?」
「それがねー」
ポカーンと口をあけるユーリに、してやったりと思ったのかは満足げに頷くと、
真剣な顔でエステルに町で何があったのかの説明を始めた。
の服装はハロウィンの仮装用の衣装へと変わっていて、いやそれよりも注目すべきはその胸であった。
曰く道具屋で買ったとされる巨大グミを詰め込んだ胸元ははち切れんばかりで。
普段のを知っているユーリからすれば違和感バリバリのその格好は、本人が真剣だからこそ尚、性質が悪かった。
さしものユーリもプルプルと肩を震わせてこみ上げる笑いを抑えるのに必死である。
「それでね、これエステルにって思って。
これはリタで・・・・・・これは・・・・・・」
「ユーリ、笑いすぎじゃない?」
「・・・っお前、それ、無理ありすぎだろ・・・っ」
嬉しそうに仮装用の衣装を広げて語るに情が移ったのか、
若干呆れた顔で批難の目を向けるカロルには反論があった。
が、口を開きかけたが最後、ユーリはついにこらえ切れずに噴き出した。
しかしそこは長い付き合い。
もユーリのその反応は想定の内だったらしく。
「何よ、ユーリ。ユーリのもちゃーんと用意してあるんだからね」
「・・・・・・は?」
盛りに盛られた胸を大げさにそらしてびらりと広げた衣装は・・・・・・どう見ても女物であった。
「素敵なおねーさまが可愛い可愛いユーリちゃんの為に用意したんだからちゃんと着なさいよねっ」
「ユーリちゃん・・・・・・?」
「ってユーリのことだよね?」
「それがねー。今はこんなだけど、ユーリ、昔は女の子みたいに可愛くて・・・・・・」
"ユーリちゃん"という単語にさっと顔色を変えたユーリに、今度こそしてやったりと思ったのか、
昔のユーリがどれほど可愛かったのかをは切々と語り始めた。
ユーリの両親が本当は女の子が欲しかったこと、だから小さなユーリに女物の服を着せていた事など、種々折々交えて。
「ちょっ!!お前なんでそれを知ってんだよ!?」
「年上をなめないでよね」
周辺への口止めは完璧なはずだったのに、とユーリが慌てると、はふふんと笑う。
年上だからこそ知っていることもあるのだと。
「・・・・・・ちょっと、こっちこい」
「あ、ちょっと、まだ語り足りない・・・・・・」
「いいから」
問答無用でをずるずると引っ張っていくユーリの耳には未練たらしげな彼女の声など、完璧にシャットアウトされていた。
「ユーリの横暴ーケチーあんぽんたんー」
ユーリは怒っていた。
何に怒っているのかというと、もちろん今ユーリの目の前で詰まらなそうに足をぶらぶらと振っているに対してである。
けれども鈍感な彼女にそれが伝わるはずがなく。
「・・・・・・お前な」
あまりにも幼稚なの雑言に、ユーリはついに堪らず顔を上げた。
こっちの気も知らないで、と文句の一つでも言い返してやろう。
そう思い口を開きかけて・・・ユーリの唇が真横にすっと引き結ばれた。
先程からこちらに向けて注がれていた複数の視線に今やっと気づいたからだ。
我ながら間の抜けたことだと思ったが、鋭く細めた紫の瞳を周囲にさっと向けると、
ユーリはそのままその視線をに移した。
ぷくーっと膨れっ面をしてもなお、損なわれない顔立ち。
胸も背もその年齢にしては大幅に足りなかったが、それを補って余りうるほど彼女には愛嬌があった。
きらきらと輝く大きな瞳、ぷっくりと膨らんだピンク色の小さな唇。
栗色で少し癖のあるふわふわした髪の毛は、太陽の光を浴びてきらきらと輝いている。
(下町には彼女のファンクラブがあったほどだ)
しかし只今注目を浴びている最たる原因は・・・その格好であろう。
はいわゆる猫娘の格好をしていたわけだが・・・・・・。
その衣装は露出が高かった。
ぴんとはった大きな猫耳や、形の良いお尻から生えている尻尾はまだ良い。
問題は大きく開いた胸元(巨大グミで割り増し済み!)と健康的にすらりと伸びたほぼ丸出しの手足だった。
これでは通行人の目を浴びるのは必至である。
そこでユーリは通行人の目からを隠すように立ち塞がると、彼女をそのまま自分のほうへぐいっとひっぱった。
ふぎゃっ、と猫みたいな、格好にそぐうんだかそぐわないんだかよくわからない声が聞こえたが、構わなかった。
そのままぎゅっとユーリは強くその体を抱きしめる。
「ちょっとユーリ!?」
「、お前俺のことどう思ってるんだ?」
「えっ!?・・・・・・ユ、ユーリは可愛い弟で・・・・・・だから私は・・・・・・」
「それも嘘、だろ?」
「嘘じゃないよ!!」
「じゃあ何で最近俺のこと避けるんだ?
必要以上に年上ぶるし・・・・・・」
「そ、それは・・・・・・」
引っ張った拍子にぶつけたのか、少し赤くなった鼻の頭を抑えて抗議の声をあげたではあったが、
真剣な顔で問い詰めてくるユーリの勢いに押されて、その言葉尻は次第にしどろもどろになっていった。
いつもならユーリもそこまで追求はしないのだが、我慢は限界であった。
ユーリには彼女に聞きたいことが山ほどあったのだ。
じいっとの瞳を見つめて、唯、ユーリはの言葉を待った。
けれどもその視線に耐えられなくなったのか、終にはぐっと黙り込んでしまう。
先に折れたのは、ユーリであった。
「まぁ、避けるのだけはやめてくれ」
「ユーリ・・・・・・」
今は旅の途中であるし。
はぁ、と小さくため息をつくと、ユーリはばさりと手に持っていた服をに被せた。
先ほどがユーリ用だと手渡した服である。
それはユーリよりもよっぽどに似合っていた。
皆のところに戻るかと、体を離しかけてふと、ユーリはその動きを止めた。
それを不思議に思ったのか、の瞳がぱちりと瞬いた。
「今に年上だから、だなんて言ってられなくしてやるよ」
「!!」
びくっと肩を跳ねあげたかと思うと、ずさーっとものすごい勢いでが後退っていく。
それはユーリも驚くほどの速さで。
ぼたぼたと胸に詰めていたグミが足元に落ち、いつものぺたんこに逆戻りになっても、
完璧に動転したの頭では認識できなかった。
そう、今起きた出来事に、の思考は完璧に停止していたのである。
「っは!」
顔を真っ赤にしてわたわたと慌てているを見て、ユーリの口元に思わず笑みがこみ上げた。
意趣返しは大成功のようだ。
「それ、ちゃんと拾っとけよ」
くつくつとひとしきり笑った後、ユーリはひらひらと手を振りに背をむけた。
それでもいいと言いつつも、やっぱり癪で、と言ったらは怒るだろうか。
「・・・・・・ユーリの馬鹿・・・・・・」
ユーリが去った後、小さく呟かれた言葉はやはり憤りの言葉で。
けれども呟いたのその顔は、ちっとも怒っていなかった。
いつもの倍以上も熱をもった耳たぶを押さえ立ち尽くすの顔は、足元のグミよりも赤く、赤く染まっていた。
Trick or Treat?
甘いお菓子よりも悪戯を。
〜〜 その夜 〜〜
「じゃ〜ん、どう?レイヴン。可愛いでしょ?」
「可愛いけど・・・・・・おっさん、せくし〜〜なちゃんもみたかったぁー」
「えっ、そう?」
「駄目だ」
「え〜なんでよ、せーねんのケチ!!」
「駄目なもんは駄目。、お前もおっさんなんかに見せんなよ」
「いいじゃない〜、減るもんじゃないし」
「見んな。減る」
「ちょっとぉ、どーしちゃったのよ青年。
何時もよりもさらに増してるんだけど」
「わたしにもさっぱり・・・・・・」
「あら、それならに聞いたほうが早いのではなくて?」
「っ!!」
「・・・・・・怪しい・・・・・・」
「怪しいわね・・・・・」
「怪しいです・・・・・・」
「うふふふ」
お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ。
ハロウィンの夜、笑っているのは訳知り顔のジュディスだけ 〜〜
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はい、お待たせしました。
ハロウィンユーリ夢です。
去年がオールキャラだったので〜。
狼コスのユーリどころか狼さんだよ!!どうなの!!
しかしユーリの過去と言うか親と言うか、捏造しちゃったよ☆
まぁ夢だしいっかー的な。
でも子ユーリは可愛すぎるよ・・・ほんとに。
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