「そういえば、って銀狼って呼ばれてたんだよね?」
突然、そんな問いを口にしたのは、
食後のデザートを口いっぱいに頬張りながらの、カロルである。
場所は客足も上々な人気の食堂。
たちも度々利用するこの食堂は所謂バイキング形式をとっていた。
好きなものを好きなだけ取れるこの形式のおかげで、
カロルのお皿の上が先程までお子様向けのメニューで一杯だったというのはもはや言うまでもないだろう。
まるでリスみたいだ。
左右の頬を食べ物で膨らましたカロルを、は小さく笑う。
カロルのその頬にはデザートの生クリームがべったりとくっ付いていた。
「うん」
「どうしてなの?」
頷きを返した後、「ここ、ついてる」とが頬を指差し指摘すると、
顔を赤くしたカロルは急いで食べ物を飲み込み、頬を拭った。
しかし、よほど気になっていたのか、すぐにその瞳が興味津々と、に向けられる。
「あ、それわたしも気になってました。
どうしてなんです?」
から向かってカロルの右側、
カロル同様、美味しそうにデザートを口にしていたエステルが言葉を重ねた。
レイヴンを除く他の仲間も少し興味があるのか、のほうに耳を傾けているのが見えた。
「んー?決まってるじゃない。
私が狼に変身するから、よ」
は少し思案するかのように首を傾げたが、
すぐににっこりと笑うと、カロルの問いに対する答えを口にした。
その顔に浮かぶのはもちろん、意地の悪い笑みである。
『えっ!?』
「あら、素敵」
それに気付かないのか、カロル、エステル、リタの声が綺麗にはもった。
そしてどこかずれたような感想を漏らすのはジュディスだ。
「ちょ、ちょっと、そんな話聞いたこともないわよ」
「そりゃそうよ、言ってないもの」
「だからって・・・・・・」
非難がましい目を向けてくるリタに対し、はあくまでにこにこと笑顔を向ける。
「私、始祖の隷長とのハーフだもの、おかしくはないでしょ?」
「そりゃそうだけど・・・・・・」
納得いくような、いかないような、複雑な顔をしてカロルが黙り込んだ。
「どーした皆。
ハトが豆鉄砲食らったような顔して」
そこへ丁度席を外していたユーリが戻ってくる。
その手にはデザートが一杯盛り付けられた皿が乗っていて、
その顔は満足そうに緩んでいた。
確か先程も生クリームたっぷりのイチゴパフェを食べていた気がするのだが、
まだまだ食べたりないらしい。
他の客はポカーンとした顔でユーリを見ていたが、
たちにとってそれは見慣れた光景であった。
「あ、ユーリ。
それがね、が・・・・・・」
案の定カロルも気にせず、椅子に座ったユーリに事の次第を説明した。
どれだけ自分達がびっくりしたか、その時の興奮を思い出したかのように、
興奮気味に身振り手振りでカロルは伝えていく。
しかし、それに対してのユーリの反応はそっけないものであった。
「ほー。そりゃすげぇな」
そう言いながら、ユーリはまた一口、チョコレートケーキを口に運んだ。
甘くて、蕩けそうなほどの口どけに目元が緩む。
久々のヒット料理であった。
「ユーリ、驚かないんです?」
「だって、嘘なんだろ?」
キョトンとしたエステルの問いに、ユーリはなんのことはないと返す。
それよりも今は目の前にあるデザートの山の攻略に忙しかった。
『えぇっ!?』
再び3人の声がはもった。
しかし、その元凶であるところの当の二人は涼しい顔である。
ユーリのフォークはカスタードクリームたっぷりのシュークリームに向けられていて、
はばれてしまったかと、小さく舌を出していた。
「なーんだ、つまんないの。ユーリは騙されてくれないのね」
「そりゃおっさんの顔見りゃ誰だって分かるって」
「へっ!?」
まさか自分に振られると思っていなかったのか、レイヴンが驚きの声を上げる。
全くの濡れ衣であるからして、それもそのはず。
ユーリが気付いたのはまた別の方法である。
「レーイーヴーンー?」
「ちょっ、ちゃん、おっさん何も悪いことしてないって・・・・・・」
しかしユーリの言うことを信じたは、武器を手にしてレイヴンににじり寄っていく。
対してレイヴンは、壮絶なまでの笑みを浮かべて目の前に迫りくるに、
どうどうと手をかざしながらじりじりと後退していく。
その額には冷や汗が浮かんでいた。
「問答無用!!」
「ぎゃー!!!」
合掌。
哀れレイヴンはの針の的となった。
「さすがね。と言いたい所だけど、あなた、最初は内心驚いていたわよね」
「まぁ、あいつに関してはいろいろあるからな・・・・・・」
見慣れた二人のやり取りであるというのも大きいと言えるが、
後ろの壮絶な光景をも全くの無視できるところがユーリたちの凄いところである。
「そういうジュディはどうなんだ?」
「あら、狼に変身するなんて素敵じゃない?」
平然としたジュディスの問いかけにユーリが問いで返すと、
にっこりとした微笑が返ってくる。
完全に楽しんでいる顔であった。
「・・・・・・そういえばジュディはそういう奴だったよな」
「ふふふ。分かっていただけて何よりだわ」
肩を竦めたユーリに、ジュディスは再びにっこりと微笑んだ。
しかし、いまいち話がつかめないのか、
ジュディスの横にいたエステルが、小さく首を傾げた。
「結局さっきのはの冗談って事でいいんです?」
「そういうことになるわね」
「あ!」
ジュディスがエステルに頷くと、
何かを思い出したのか、カロルが大きな声を上げた。
「どーしたカロル」
「今日ってエイプリルフール・・・・・・」
「そういえば・・・・・・」
今日は4月1日、エイプリルフール。
つまり午前中は嘘をついてもいい日なのである。
カロル、エステル、リタの3人はそのことをいち早く思い出したにまんまと騙されかけたという訳である。
「もう、レイヴンの所為で台無しよ。責任とってよね」
「だからおっさん何もしてな・・・・・・」
「何よ。なんか文句でもある?」
「いえ、なんでもアリマセン」
に睨まれたレイヴンの背が縮こまる。
よほど先程の的扱いが効いたのか、その語尾はもはや棒読みであった。
濡れ衣を着せたユーリとしては少々罪悪感が無きにしも非ず、
小さく肩を竦めていると、ユーリの足に何かが触れた。
「ワフ」
「ん?ラピードどうした」
足元でこちらを見上げるのは、ラピードであった。
何か言いたげなラピードに、ユーリがしゃがんで耳を傾けると、
ラピードはくいと首をの方によこしてまた一声鳴いた。
「ワン!!」
「どーして気付いたかって?そりゃあ・・・・・・」
は嘘をつく時、僅かに視線を逸らす。
それはつい最近分かったことだ。
注意深く見ていないと気付かず終わってしまう仕草。
それでもユーリはそれに気付くことができた。
それはユーリがをいつも見ていることに他ならない。
「・・・・・・には内緒だぞ」
「ワォン!」
本人でさえ気付いていない、ユーリだけが知っている彼女の仕草。
独占欲が強い訳ではないが、今はただ自分だけの秘密にしたかった。
が気付くまではただ、このままで・・・・・・。
ユーリはラピードに向かって片目を瞑ると、小さく笑って、
未だレイヴンとじゃれあっているの方に愛しげな顔を向けた。
嘘の合図
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ユーリ夢だって言い張る(マテ
4月1日にアップしたスキットを小話に仕立て上げました。
いや、最初はそのつもりだったんですけどね(苦笑
ギャグにしようかなと思いつつもなりきれず・・・・・・。
デザートくだりのところでその流れが・・・。
後レイヴン南無。
久々にラピードがでたよ!!久々のPTオールだよ!!
てなわけで、エイプリルフールネタで嘘つきなヒロインのお話でした。まる。
仕草云々はレイヴンあたりは気付いてそうだなーどうだろなー。
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