ハルルの宿の一室で、フレン達は寄り集まって話をしていた。
部屋の中にはの他、フレンの二人の部下がいる。
「ノール港についてだけど、一つ言っておく事があるわ」
腰を落ち着けたところで、まず口火を切ったのはだった。
小さな机の上には地図が開いて置いてあり、
地図上の丁度カプワ・ノールの位置する場所を、は指でトンと叩く。
「この街が今おかしいことはもう知ってるわよね?」
「ああ」
次の巡礼地という事もそうだが、元々ノール港は、騎士団の調査対象にあった。
と、いうのもこの街の執政官は騎士団と対立する評議会の人間で、
就任してから色々と黒い噂が絶えないのである。
又、詳しい詳細はまだあがってきていないが、
フレン達の探し物にはどうやらここの執政官が関っているらしい。
だからこそ、なおさら行かなければならないのだ。
フレンが頷き返すと、次には数枚の紙束を地図の上に広げた。
流麗な文字でぎっしりと白地が埋められたそれは、報告書のようだった。
「これはそれについて取りまとめた報告書。
それであなたはソディア、だったかしら。
これ、読んでもらえる?」
「これは・・・・・・」
その中から一枚、抜き出された紙に目を通したソディアの顔色が、途端に変わる。
の情報収集能力は騎士団一といっても差し支えなく、
広げられた報告書同様、
ソディアが持つ紙にも事細かな詳細が書かれていることは疑いようがなかった。
「それでウィチルはアスピオの魔導士だったわよね?」
「ええ、そうですが」
「魔導器の中に天候を操るものってのはあるのかしら?」
「天候を操るもの?
そんなもの聞いたことが無いですよ!」
「そうよね、だとすれば・・・・・・」
ここ数ヶ月の間、ノール港付近は悪天候が続いていて、
それは魔導器によるものではないかと、は言う。
天候は船を出すたびに悪化し、
それを理由に封鎖された港から出た船は法を侵したとして攻撃される始末。
困っているのは船を出せない住民だけだった。
執政官はその住民達から税金をむしりとり私腹を肥やしている。
騎士団の目が届かないのをいい事に、やりたい放題だ。
「どちらにせよ、やる事は変わらないだろう?
行こう、皆」
がまとめあげた報告書にざっと目を通して、フレンは立ち上がった。
これ以上、執政官をのさばらせる訳にはいかなかった。
フレンとの目が合う。
「そうね、行きましょう」
「あ、待って下さい。
さっきの―――」
が立ち上がり、部屋を出ていくが、
先程の魔導器の話で気になる点があったのか、ウィチルがその後を追って出る。
後に残ったのはフレンと、広げた紙を束にまとめていたソディアだけだった。
「フレン様。
あの人は一体・・・・・・」
言われて、そういえば、と思う。
ソディア達にはに関して、簡単な紹介しかしていなかった。
フレンはソディアに向き直ると、口を開いた。
「・クロフォード。
君も名前だけは知っているだろう?」
「あの特務師団の・・・・・・!」
ソディアがはっと息を呑む。
特務師団とは騎士団長直々に制定した特別な部隊であり、
主に騎士団の諜報活動を担当している。
部隊といっても実質、今は一人であったが、
まだ就任して間もないにも拘らず、彼女の有能ぶりは音に聞く程だった。
反面、仕事上は帝都を留守にすることが多く、
姿はあまり良く知られていない。
名前だけが先行して広まっているのは、彼の騎士団長主席と同様だと言えよう。
「けど、彼女、人に敬われるのを何よりも嫌うから、
普通に接してあげてくれるかな。
君と同じ女性だしね」
「・・・・・・わかりました」
年齢も身分も、上下は何もない。
それがの信条だった。
小さく頷いたソディアの肩を手で軽くぽんと叩くと、
フレンは先に出て行ったを追って、部屋の外へと向かった。
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