はっ、はっ、はっ、と息を弾ませて、は走っていた。
家から全速力で走ってきていたため、頬は上気し、胸は酸欠で苦しかったが、
前方に深い森が見え始めた頃、森の入り口に人影を見つけて、
はさらにスピードをあげると勢いよくその人影に飛びついた。




















―「きみ」おもうこと―




















「えるしふる様!」
か、どうした?そんなに息せき切って」


突然現れたに、一瞬驚いたようだったが、
が飛びついた人物、エルシフルは、を抱き上げるとにこりと微笑んで、顔を覗きこんでくる。
エルシフルは父親の所謂上司に当たる存在だが、
たびたびの家を訪れては自分と遊んでくれる、の大好きな人だった。


「お客様が、来たって、きいて・・・・・・」


荒れた呼吸を整えながらはエルシフルを見上げる。
部屋で一人遊んでいたは、父親からその事を聞いたとき、
待望の知らせに居てもたってもいられず、家を飛び出してきたのだ。


「そうか、お迎えありがとな、
「えへへ」


エルシフルにぽんぽんと優しく頭を撫でてもらうと、は地面に降り立った。
そうして小さく、きょろきょろと辺りを見回す。


「・・・・・・」
「どうした?」
「・・・・・・でゅーくお兄ちゃんは」
「ん?」


あまりにも小さな声でつぶやいた為か、エルシフルには聞こえなかったらしい。
耳を寄せてきたエルシフルに、は再び声に出す。



「・・・・・・でゅーくお兄ちゃんは来てないの・・・?」


デュークは以前が迷子になったときにエルシフルと共に探しに来てくれて、
一番にを見つけてくれた人だ。
それから何度か、エルシフルと一緒に家を訪れてきているので、
今回も彼と一緒に居ると思ったのだが、いくら辺りを見回しても、それらしき人影は見当たらなかった。


「誘ってはみたのだけどな」


ああ、と頷き肩を竦めたエルシフルに、はがっくりと項垂れた。
エルシフルは好きだ。
だけども、もっと大好きなデュークに会えると思って全力疾走してきたにとって、
彼が居ないということはどん底に落ちるに等しかった。
心なしか、ここまでくるときは平気だった体も重く感じ始める。

と、しゃがんだエルシフルが、を優しく見つめた。


は本当にデュークが好きなんだな」
「うん!だーい好き!」


デュークが好きなのか、とエルシフルに聞かれて、
ぱぁっと笑顔で顔をほころばせて、はぴょんと飛び跳ねる。
どのくらい好きかというと、両手を大きく広げても表しきれないほど大好きだった。


「あのね、が大きくなったらね、
 でゅーくお兄ちゃんにお嫁さんにしてもらうの!」
「やれやれ・・・・・・の父親が聞いたら卒倒しそうな台詞だな」


今度はエルシフルが小さく呟く番だった。
よく聞こえなかったがほええ?と首を傾げると、
エルシフルの優しい手が頭の上にぽんと置かれる。


「いや、少々妬けてしまうなって言ったのだよ」
「!」


言われ、ははっと目を見開いた。
一瞬垣間見えたエルシフルの寂しげな微笑に、
もしや彼の気分を悪くしてしまったのかと思ったのだ。


「えるしふる様も勿論大好きだよ!
 いつも遊んでくれるし、優しいし・・・・・・それにそれに」
「はは、ありがとう」


小さく笑い、くしゃくしゃっとの頭をなでたエルシフルはもういつものエルシフルだった。
はくしゃくしゃになっってしまった頭にむーっと頬を膨らませると、
ぽかぽかと彼の手のひらに殴りかかった。
エルシフルは暫く笑って殴られるままだったが、
吹いた突然の風に、彼の手がの小さな手をきゅっと掴む。


「・・・・・・えるしふる様?」
「いや、・・・・・・行こうか」
「うん!」


デュークに向ける好きとは違っているが、エルシフルが大好きなことには間違いないのだ。
今度は優しく手を握ってくれたエルシフルには笑顔を向ける。
きゅっと小さく手を握り返すと、エルシフルは大好きな笑顔を返してくれた。


「今度はデュークも連れてくるよ」
「ほんとう!?」
「ああ、引っ張ってでもな」


家へと歩きながら、茶目っ気たっぷりにウィンクをしたエルシフルが、物を引っ張る真似をした。
無理やりにでも連れて来て欲しかったなと、ちょっぴり、いや、かなり思っていた
飛び上がらんばかりに喜ぶのは自明の理だった。


「ありがとう、えるしふるさま!」
「っ、うわ!」


嬉しさのあまり、いつもより大きく飛びついたに、
流石のエルシフルも抱えきれずバランスを崩したのだった。









































--------------------------------------------------------------------------
おひさしぶりです、すいません。
ブランクありまくりですが、LaVo過去編のお届けです。
まさかのエルシフルとの過去編。
描写がまるでないお相手なので、イメージと違っていたらすいません!
私の中のエルシフル様とヒロインはこんな感じということで!
ひとつお願いいたします!

ヒロインちゃんの幼少期、素直でいい子だな〜〜。
って今もなんですけどね!
やーちっちゃい子は書いててほんわかしますね。ほわ〜。