達はカプワ・トリムの北西にある、地震で滅びた街、カルボクラムに来ていた。
そこはかろうじて、街があった形跡が残っているが、建物は崩れ落ち、とても人がいるような有様ではなかった。
入り口から奥に向かうと、魔狩りの剣のメンバーのナンという少女が、この場から立ち去れ、と忠告していったが、
誰も聞くものはいなく、さらに奥へと進む道をとった。


「はあ・・・・・・なんで上手くいかないんだろう・・・・・・。  クビ・・・・・・クビって言われた・・・・・・」
「カロル、大丈夫?」


先ほどナンにはっきりとギルドをクビといわれたのがよっぽど堪えたのか、カロルは俯きながらぶつぶつと呟いていた。
その足取りは辛うじて前に進むものの、ふらふらとして今にも木や建物にぶつかりそうであった。
はそんなカロルが気になり、声をかけたが、カロルはそれには気づかず、思いつめた顔で立ち止まる。
先へ進みかけたユーリが、こちらを振り返り、カロルの方を仰ぐと、カロルはやっと気づいたのか、顔をあげると、急いでこちらに向かって走り出した。















入り口から左手の方に進むと、建物の脇に泉があるのが見える。
上流に滝があるのだろうか、その泉は滅びた街の中でも滾々と清水がわきおこり、辺りに清浄な空気を漂わせていた。


「泉、泉ですよリタ」


エステルがリタの手を取って泉の方向に走って行ってしまうと、ユーリはの傍に寄り、イヤリングを見せる。


「そういえば、フレンからコレ預かってたの忘れてた」
「あ〜これか、それはど〜も」


はイヤリングをユーリの手から受け取り、自分の両耳につけると、お礼を言った。


「あれ、二つ!??
  ・・・・・・あれでも、船のとき術使ってたよね?」
「それを聞かないのが男の優しさってもんだよ、カロル先生」
「えぇ!?なにそれ、わかんないよぉ・・・」


カロルがとユーリの一連の動作を見て不思議そうに声を上げたが、はカロルの頭をぽんぽんと叩きそっぽを向いた。
その姿を見たユーリはの顔を覗く。


「聞かねえほうがいいのか」
「うん・・・・・・今は・・・・・・ね」


が泉のほうにいるリタとエステルの方を見て答えると、ユーリはそうか、と言い、エステル達の方に歩いていった。
ユーリはやっぱり大人だねぇ・・・・・・とはその後姿を見て思う。
未だ不に落ちない顔をしているカロルに、カロル先生も見習いなさい?と急かし、もエステル達に合流した。















カルボクラムの奥の建物の中にあった、長い長い螺旋階段を下っていくと少し広い広間にでる。
そこは今まで入った建物と違い、乱雑した雰囲気はなく、奥に頑丈そうな扉が見えるだけであった。


「な、なんだろう。さっきから気持ち悪い」
「鈍感なあんたでも感じるの?」
「鈍感はよけい・・・・・・!っていうか、リタも?」
「こりゃ、なんかあんな」


さらに奥に進むと、カロルとリタが苦しそうに胸を押える。
不審に思い、回りを見渡すと、萌黄色の物質が周囲を取り巻いているのに気付く。
どうやら回りに高密度のエアルが漂っていて、それが人体に影響を及ぼしているのだろう。


「ユーリも、エステルも?」
「へ、平気です」
「無理することもねえだろ。休憩して様子見すっぞ」
「一体、なんなのかしら。ここに来てから急に・・・・・・」


は他の人はどうかと周りに目を配ると、エステルも苦しそうにしているのが見えた。
ユーリとラピードは多少平気そうにみえるが、皆の手前、平静を装っているであろうことが、その顔色から窺える。
そうこうしてるうちに、エステルが耐え切れず、地面に崩れ落ちた。
それを見たユーリは、すかさずエステルに駆け寄った。


「ユーリ・・・・・・!」
「行き倒れになんなら、人の多い街ん中にしといてくれ。オレ、面倒見切れないからな」
「は、はい、ありがとう。まだ、だいじょうぶです」


エステルがそうユーリに答えると、二人は立ち上がる。
その後、照れ隠しなのか、ユーリはエステルに背を向けると、頭の後ろで手を組んだ。
は頬に手を当て、少し考えると、仕方がないよね、と小さく呟き、自分の髪をかきあげイヤリングを外す。
そしてそれをそのまま両手に持つと、症状の重そうなエステルとカロルに駆け寄った。


?」
「この周りの、エアルだから、これ持ってて」


はイヤリングを片方ずつ二人に手渡すと、ユーリとリタにも二人の傍に寄るように言った。


「あれ・・・・・・平気になりました」
「そのイヤリング、エアルを拡散させる事が出来るの。
  ・・・・・・大量のエアルはさすがに無理なんだけどね」


はそう言いながらも、さっきから気になっていた奥の扉に近寄り、それを調べ始めた。


は平気なのか」
「うん。でもそういうユーリも結構平気そうだよね」
「まぁオレは鍛え方が違うからな」


ユーリはの傍に近寄ると、気になっていたのか、扉の制御盤をいじっていたの手元を覗いてくる。


「この魔導器がドアと連動してるみたいね」
「どうやって開けるの?」
「ご丁寧にパスコードを入力しなきゃダメみたい」
「壊しちまった方が早くねぇか?」


カロルとユーリが聞いてくるが、は「私に任せなさいって!」と言って、制御盤のキーボードを叩いた。
パスコードの認証が終ると、すぐに扉はギギィ・・・・・・、と重そうな音を立てて開く。
はそれを確認すると、ユーリ達を振り返り、心なしか自慢げに、「さ、行きましょ」と微笑んだ。