「ふぅん、こんなところにコレがね・・・・・・
・・・・・・確かにコレなら天候も操れるわね・・・・・・」
は魔導器の傍に立って、魔核を撫でた。
レイヴンと別れた後、は階下に降り、ユーリ達を探したが、彼らの姿は見当たらなかった。
どこかで足止めでも食らっているのだろうか、館の入り口は目の前に見えるので、行き違いという事はなさそうだ。
ここで待ってればそのうち来るだろうと、が辺りを探り始めると、部屋の中央に巨大な魔導器を発見した。
巨大魔導器は様々な魔核を継ぎ合わせて作られていて、普通の魔導器と比べ物にならないくらいのエネルギーを発している。
どうやらこの魔導器が長く降り続く雨の原因のようだ。
「あ、!!!」
が魔導器にもっと近寄り、詳しく調べていると、奥の扉が開き、カロルが飛び出してきた。
がそちらを見ると、ユーリ達も後に続いて出てくるのが見える。
リタが魔導器の存在に気づき、「これは・・・・・・!!」と言いながら傍まで駆け寄ってきたので、は今まで立っていた場所をリタに譲った。
「・・・・・・こんな無茶な使いかたして・・・・・・!
エフミドの丘のといい、あたしよりも進んでるくせに、魔導器に愛情のカケラもない!」
しばらく魔導器を調べていたリタだが、その魔導器の扱われ方に不満を覚えたのか、そう叫んだ。
これで証拠は確認できたことだし、調べるのは後にしましょう、とエステルはリタを促したが、リタは構わず魔導器の操作盤を叩き続けている。
「・・・・・・もうちょっと、もうちょっと調べさせて・・・・・・」
「あとでフレンにその魔導器まわしてもらえばいいだろ?さっさと有事を始めようぜ」
「・・・・・・何か壊してもいいものは・・・・・・」
リタが調べている間にフレンが来てしまっては堪らない。
ユーリ達は辺りを見回し、騒ぎを起こしやすいものを探しに散った。
カロルは目に付いた柱の一本に見当をつけ、持っていた大きなハンマーで叩き壊し始めた。
も何かないかと辺りを見回したが、ユーリの方を見やった時、彼がさりげなくサボっているのが分かり、ユーリらしい、と小さく笑った。
「あ〜っ!!もう!!」
各人が思い思いの作業をしていると、リタが痺れを切らしたのか叫んだ。
リタの周りに光る術式が現れたと思うと、すぐに術式から火の玉が飛び出し、辺りに散って館の壁にぶち当たった。
「うわぁっ!いきなり何すんだよっ!」
火の玉の一つが掠ったのか、カロルが悲鳴を上げる。
「こんくらいしてやんないと、騎士団が来にくいでしょっ!」
「でも、これはちょっとやりすぎなんじゃないの?」
リタの放った火の玉は館中の壁や地面や柱にあたり、一部は崩れ、煙が立ち込めていた。
がリタに注意していると、上階にラゴウらしき人物が現れ怒鳴る。
「人の屋敷でなんたる暴挙です!
おまえたち、報酬に見合った働きをしてもらいますよ。あの者たちを捕らえなさい」
ラゴウのその合図で傭兵らしき男達がばらばらとこちらに向かってくる。
「ただし、くれぐれもあの女を殺してはなりません!」とラゴウが言うのを聞くやいなや、ユーリは剣を構え、敵に向かって走った。
は頬に手を当て彼らの様子を見ながら考える。 先ほどラゴウはエステルを指差した。 帝国のごたごたに興味はないが、ラゴウにとってエステルは重要な存在なのであろう。
なるほどね、とは小さく呟きエステルをじっと見つめた。
「まさか、こいつらって、紅の絆傭兵団?」
エステルとユーリが敵を切り伏せると、地下から助け出したという子供をカロルが守りながらそう言った。
ユーリは再び敵を退けると、リタとの元に駆け寄り、「充分だ、退くぞ!!」と声をかけた。
そう言われても、リタはまだ気が納まらないのか、詠唱を続け、火の玉が何個も頭上に散る。
「何言ってんの、まだ暴れたりないわよ!」
「早くにげねぇとフレンとご対面だ。そういう間抜けは勘弁だぜ」
「まさか、こんなに早く来れるわけ・・・・・・」
リタは術式を発動させながらも、ユーリに答えようとしたが、彼女が入り口の方に目を向けた時、その言葉は途中で切れる。
その行動を不思議に思ったユーリ達が、リタが見ている方向に目をやると、そこにはフレン達がいつのまにかに立っていた。
「執政官、何事かは存じませんが、事態の対処に協力致します」
「フレン!?」
「ほらみろ」
エステルがフレンを見て叫び、ユーリは呆れた顔でリタを見た。
リタはそれを見て、ユーリから眼をそらす。
はそんな彼らを見て苦笑した。
「ちっ、仕事熱心な騎士ですね・・・・・・」
ガシャーンッ
ラゴウがつぶやいた瞬間、ガラスが割れる音が響き、窓から竜に乗った人が乗り込んできた。
「うわぁ・・・・・・!!あ、あれって、竜使い!?」
カロルが上を見上げ叫ぶ。
フレンは両隣の部下に合図を送ると、自身も竜使いの元に走った。
竜は少し上空で停滞した後、とリタの脇を通り抜け、魔導器のところまで飛ぶ。
がそちらを見据えると、竜が一声鳴き、竜使いの槍は魔導器を貫いた。
魔核が傷ついた魔導器は光を発し、その動力を停止した。
「ちょっと!!なにしてくれてんのよ!魔導器を壊すなんて!」
「本当に、人が魔物に乗ってる・・・・・・」
待て、こら!とリタが術式を発動させるが、竜は火の玉を軽く避け、飛び上がった。
フレン達もそれを追おうとするが、竜がその前方に火を吹いた為、足止めをされる。
「くっ、これでは!」
「フレン!!イヤリングを使って!!!」
フレンのその姿を見て、は叫んだ。
それを聞いたフレンはすぐさま懐からのイヤリングを取り出し、何事かを呟いた。
その瞬間、フレンの目の前に広がっていた炎が見事に掻き消える。
「何、アレ・・・・・・!」
リタがその光景をみての方を振り返る。
炎が消えたのはいいが、竜はすでに窓から外に飛び去った後のようだった。
上階を見ると、達が竜使いに気を取られている間に、ラゴウは脱出する準備を整えていたらしく、「船の用意を!」と叫んでいた。
「ちっ逃がすかっ!!」
ユーリは叫び、ラゴウの後を追う。
達もそれを見て、すぐに後に続いた。
「!なんなの、あのイヤリング!
・・・・・・炎が掻き消えるなんて・・・・・・」
達がラゴウを追って館の外に出た後、リタがにそう尋ねるが、は子供の前にしゃがんで顔を覗きこむと、一人で帰れる?と聞いた。
子供は「大丈夫、一人で帰れるよ」とに言い頷くと、街の方に向かって走っていった。
それを見届けたは立ち上がり、ユーリ達の方に向き直ると、「早くラゴウを追いかけないと逃げられちゃうよ」と言った。
リタはまだなにか言いたそうにしていたが、達は館の裏手にある桟橋に向かって走り出した。
達が桟橋に着くと、すでに船は岸から離れ始めていた。
「あたしはこんなところで何やってんのよ・・・・・・」
「行くぞ・・・・・・!」
「ちょっ待って待って待って!心の準備が〜〜〜〜!!」
「でもあれでは、もう追いつけないのでは・・・・・・!」
ユーリ達のその言葉を聞いて、はしょうがないなぁ・・・・・・と術式を発動させる。
発動した術式はユーリ達を包み込み、船に向かって浮かび上がった。
「すごいよ、、あの術なんなの?」
船に無事飛び乗った達は甲板に立っていた。
息を切らしていたカロルは一息つくと、に向かってそう尋ねた。
「ん〜?レビテーション?」
「なんだよ、それ」
「ん〜・・・・・・空中浮遊みたいなもんかな」
「ふーん」
さすが、ユーリは息も切らしておらず、平然とした様子での傍に近寄ってきた。
「あれ、でも、武醒魔導器フレンに預けたままだよね?」
「イヤリングは二つあるもんなんだよ、カロル君」
「んじゃ、あんたはその片方を使ったわけ?」
「うん」
がカロルとリタに答えていると、奥の扉から物音が聞こえた。
ラピードがいち早くその音を聞きつけ、構えているのが見える。
それを見たユーリは物陰に隠れ、カロルに合図を送ると、その合図を受けたカロルは扉をあけた。
その時、
「どきやがれぇっ!」
と、怒鳴りながら男が船室から飛び出てくる。 カロルはその勢いに負け、後ろに吹き飛ばされる。
はさり気なくカロルの後ろに回ると、彼が飛んできたところを危なげなくキャッチした。
「隻眼の大男・・・・・・あんたか。人使ってコア盗ませてるのは」
物陰に隠れていたユーリが剣を大男に向ける。
それをうけた大男は、「そうかもしれねえなあ・・・・・・」と言いながら右手に持っていた大剣を振り回した。
ユーリはそれを軽々と跳んで避ける。
そのユーリの動きを見て、大男はユーリを気に入ったようだ、惜しがるような目でユーリを見ている。
「バルボス、さっさとこいつらを始末しなさい!」
いつまでも動こうとしない大男が煮え切らなかったのか、甲板の裏手の方からラゴウが叫んだ。
そうだ、バルボスだ。はようやく隻眼の大男の名前を思い出した。 たしかバルボスは紅の絆傭兵団の首領をやっていたはずだ。
バルボスが動いているとなると、紅の絆傭兵団全体が動いているのは間違いはないだろう。
ラゴウはそんな巨大な組織を使って何をしようとしているのだろうか。
はラゴウの顔を見、続いてバルボスの顔を睨んだが、バルボスは騎士に追いつかれては面倒だ、と降板の裏手に向かって駆け出した。
ラゴウはそれをみて舌打ちをしたが、「ザギ・・・・・・!後は任せますよ!」と叫びバルボスの後を追うと、船に取り付けられていたボートに乗り込み、バルボスと一緒に逃げていった。
が気配を感じ扉の方を見ると、そこには紅い目の男が立っていた。
「誰を殺らせて、くれるんだ・・・・・・?」
「あなたはお城で!」
「どうも縁があるみたいだな」
エステルとユーリの言葉を聞く限りでは、どうやら二人の知り合いのようだ。
ザギという男は武器を構えると、殺らせろぉっ!と叫びながらユーリに向かって跳んだ。
ユーリはなんなくその攻撃を避けると、お手柔らかに頼むぜ、とザギに言いながら自分の肩に剣を置いた。
ザギの攻撃は船の動力を傷つけたらしく、船から煙と炎が立ち上る。
はユーリに、「ちゃんと考えて動いてよ!」と抗議をして船の魔導器に近寄った。
「ぐぅあああっ!!!」
「勝負あったな」
「・・・・・・オ、オレが退いた・・・・・・
・・・・・・ふ、ふふふアハハハハっ!!
貴様、強いな!強い!強い!覚えた覚えたぞユーリ、ユーリっ!!」
が魔導器の様子を見ている間に勝負はついたらしい、ザギはそう叫ぶと、船から飛び降りていってしまった。
「これ、もうダメ!沈んじゃう!!」
が叫ぶと、海へ逃げろ!!とユーリが皆に言いつつ、自身も船の縁に向かおうとした。
しかし、船室の方から誰かの声がするのを聞きつけると、ユーリはそちらに走っていった。
「ユーリ!!」
「エステリーゼ!だめ!」
「でも・・・・・・でも・・・・・・!」
「ごちゃごちゃ言ってないで、飛び込むの!」
「私、泳ぐの苦手なんだけどなぁ・・・・・・」
エステルはユーリの心配をしていたが、は悠長にそんな事を言った後、皆と一緒に飛び降りた。
ユーリを除く全員が海に飛び降りたところで、達の目の前で船は沈んでいった。
「みんな、大丈夫?」
「わたしは・・・・・・でも、ユーリが・・・・・・」
「ユーリなら大丈夫だって」
エステルは不安そうな顔をしていたが、はさほど心配もせずにそう言った。
ふと、海を見ると、目の前にぷくぷくと泡が立ち上っている。
なんだろうと思い、それを凝視すると、一人の少年を抱えたユーリが海の中から浮かんできた。
「ユーリ・・・・・・!よかった・・・・・・!」
「ひー、しょっぺーな。だいぶ飲んじまった」
「ほら、言ったでしょ?」
はユーリに、おつかれーと言うと、海の向こうを睨んだ。
睨んだ方向、カプワ・ノール方面から船が来るのを見て、カロルがおぉい!と船に向かって叫んだ。
船はフレンが用意した物だったらしい、船がゆっくりと近づいてくる。
「どうやら、平気みたいだな。
・・・・・・っ!ヨーデル様!
今、引き上げます。ソディア、手伝ってくれ」
フレンはユーリが抱えた少年を見て一瞬目を見張ったが、すぐに後ろの部下に声をかけると、達を引き上げる準備に取りかかった。
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