ユーリと別れたは、カプワ・ノールの南に位置する高台に立っていた。
街道を少し離れると、そこは木々が立ち並び、鬱蒼とした雰囲気を立ち上らせている。
加えて、雨も未だにやむ気配がないので、周囲には陰鬱とした空気が流れていた。
は雨は嫌いではなかったが、さすがに少々様子がおかしいことに気付き、溜息をついた。
さらに海の方に近づくと、木々の向こうに黄金のタテガミが見え隠れしているのが分かった。
「さて、やりますかね」
は髪をかきあげ、イヤリングをはずすと、それをポシェットに入れ、走り出した。
木々の隙間を走り抜けながら様子を窺う。 さっき見えた魔物はやはりリブガロのようだ。
その魔物は金色のタテガミを雨に濡らし、気持ちよさそうにしている。
「っ!!」
はリブガロに気付かれない位置に立ち止まり、何かを呟いた。
その瞬間、彼女の姿は掻き消え、リブガロの背後に瞬時に現れた。
「頂いていくわね」
そう言ったの手元には黄金に光るリブガロの角が握られていた。
「相変わらず、じっとしているのは苦手みたいだな」
「人をガキみたいに言うな」
がノール港に戻ると、ユーリとフレンが町の入り口でなにやら話していた。
「ユーリ、無茶はもう・・・・・・」
フレンはユーリにそう言い、踵を返そうとしたが、が街の入り口に立ってこちらを見ていることに気付き、彼女に向かって会釈をした。
はフレンに手をひらひら振って返す。
背を向けていたユーリもに気がついたようで、に向かって歩いてくる。
「はい、これ」
「おまえ、これ・・・・・・」
「最初からそのつもりだったでしょ?」
「いや、それよりどうやって・・・・・・」
「ふふ、企業秘密で〜す」
はリブガロの角をユーリに手渡すと、口に人差し指を当て笑った。
ユーリは不に落ちないようであったが、角を持ち直すと、先ほどの町人のところへ向かっていった。
はフレンに向き直ると、彼に笑顔をむける。
「フレン、お久しぶり」
「・・・・・・さっきはすまない」
「あら、かまわないわよ。エステルとの感動の再会、でしょ?」
「僕とエステリーゼ様はそんなのでは・・・・・・」
「そう?らぶらぶにみえたけど・・・・・・」
どうやらの勘違いだったらしい。
フレンもユーリも美形なのにもったいないのではないか。
恋人の一人や二人いてもおかしくはないと思ったのだけど。
世の中って不思議よね、とはひっそりと息を吐いた。
「それより、、ハルルではありがとう」
「どういたしまして。
でも、どっちにしろすぐにエステルが何とかしちゃったみたいだし、
たいしたことはしてないんだけどね」
それにフレンを追いかけてアスピオに行ったら、すれ違いだったみたいだし。
と、が続けたら、フレンは「それでも助かったよ、ありがとう」と言った。
はフレンと別れた後、ユーリ達を探しに街を歩き回ると、ちょうど宿屋の前で彼等が話し込んでいるのを見つけた。
「よろこんでいましたね」
「ちょ、ちょっと!あげちゃってもいいの?」
「あれでガキが助かるなら安いものだろ」
「でも献上品がなくなっちゃったわよ。どうすんの」
「ま、執政官邸には、別の方法で乗り込めばいいだろ」
なにかあったの?とが聞くと、カロルがこちらに駆け寄り、経緯を説明してくれた。
町人は喜んでくれたけど、リブガロの角を手土産に、執政官に会いに行くという手段がなくなったということらしい。
執政官邸にも持っていくなら、2個取ってくればよかった、とは肩を落とした。
「なら、フレン達がどうなったか確認に戻りませんか?」
そんなの姿を見かねたエステルは皆に提案する。
他に手段も思いつかない事だしと、達はフレンの所に向かうことにした。
「相変わらず辛気くさいかおしてるな」
「色々考えることが多いんだ。君と違って」
「ふーん・・・・・・」
宿屋の一室にはいると、空気はどんよりとしていてあまり良いものではなさそうに見えた。
案の定、フレンは顔を曇らせていたが、ユーリが彼に声をかけると、彼はそれに応えた。
「執政官とこにいかなかったのか」
「行った。魔導器研究所から調査執行所を取り寄せてね」
「でもだめだったと・・・・・・」
「ま、そんなもんだな」
ユーリは腕を組み、壁に寄りかかった。
は奥にある椅子に向かい、それに座り込むと、フレンに話の続きを促した。
「今下手に踏み込んでも、証拠は隠蔽され。しらを切られるだろう」
「で、次の手考えてあんのか?」
「・・・・・・・・・」
「なんだよ、打つ手無しか?」
フレン達にはなかなか難しいらしい。
ユーリの二度の問いかけにも色よい返事はもらえず、部屋の中には陰鬱な空気が流れる。
はイヤリングをポシェットから取り出すと、手の中で弄んだ。
「・・・・・・中で騒ぎでも起これば、騎士団の有事特権が優先され、突入できるんですけどね」
そんな微妙な空気が漂う中、フレンの部下であろう、緑色の髪をした少年が、ぼやいた。
「なるほど、屋敷にドロボウでも入って、ボヤ騒ぎでも起こればいいんだな」
ユーリは壁に寄りかかっていた体を起こし、剣を手にとり部屋の入り口に向かう。
も椅子から立ち上がり、これ、使って、とフレンにイヤリングを手渡すとユーリの後に続いた。
「ユーリ、しつこいようだけど・・・・・・」
「無茶するな、だろう?」
ユーリはフレンに片手をひらひら振って応えた。
達が部屋の外に出て、扉を閉めると、
「市中の見回りに出る。手配書で見た窃盗犯が、執政官邸を狙うとの情報を得た」
という、フレンの声が聞こえた。
「フレン、固いねぇ」
「ま、それがあいつの良いところであり、悪いところでもある。」
「そうね」
はユーリに同意した。
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